第22話 聖声水

塔の老人の力で老婆の小屋まで到着した二人は小屋のドアをノックした。

しばらく待つと老婆がドアをゆっくりと開ける。



「よく来たねえ。さ、とりあえず中に入りな。茶でも出してやる」


老婆は小屋の中に二人を招き入れる。



「あの。おばあさん、僕たち早くガルーダさんを助けたいんです。勝手なんですけど聖声水を早く作って欲しいんです」


二人をもてなそうとしている老婆に向かいシルスラは真面目な面持ちで言った。



「ほう。二人とも良い顔になったみたいじゃな。さてと、じゃあバッカスの水をもらおうか?」


キッドは袋から水の入った瓶を取り出し老婆に渡す。



「あ、そうだ。おじいさんにこれも渡すようにって」


そう言ってキッドは手紙も渡す。



「ないだい。手紙かい。どれどれ中身を見てみるかね」


老婆は手紙の封を開け始める。



「あ、気をつけて。それは呪いがかかってるかも」


キッドが注意しようとした頃には老婆は手紙を読み始めていた。


老婆は手紙を読みながら頬を赤らめた。



「もう、じいさんったら。ワシじゃって今でも思っておるよ」


手を頬に当てながら老婆は独り言のように言う。老婆の顔はどんどん赤くなる。


シルスラとキッドはなんなんだろうと顔を見合わせていた。



「オ、オホン。さてと、チャチャっと聖声水を作っちまおうかね。ちょっと集中したいんでね。おぬしらはそこで待っておれ」


老婆は二人にクッキーなどの簡単な菓子を出したあと小屋の外へ出ていった。



「ガルーダさん大丈夫かなあ。もうやられちゃったりしてないよね?」


キッドは再び不安が出てきた。



「大丈夫ですよ。僕たちだってもうここまで来れたんです。信じていればきっと平気。僕たちが信じなきゃ誰が信じるんですか?」


シルスラが言う。


「でもガルーダさん、今どうしてるんでしょう。あんな牢屋にずっと一人じゃ辛いですよね。少しでも早くバッカスに戻らないと」



二人はガルーダの安否を気にしながら聖声水が出来るのを待った。





老婆の小屋に着いたときは明るかった空も今ではすっかり日が暮れていた。


すると小屋のドアが開く。



「待たせたね。これが聖声水だよ」


透き通った小瓶に入れた聖声水を持ちながら老婆は言った。



「ありがとうございます。これでやっとガルーダさんを助けられる」


シルスラは安堵の表情を浮かべる。



「まだ安心するには早いよ。早くバッカスまで戻らんと」


老婆はシルスラに言う。



「そうだよ。急いで戻ろう。でもどうやって行こう。ここに来るときはおじいさんに魔法ですぐだったけど」


時間が刻一刻と過ぎていることにキッドは焦りと不安を抱える。



「ふっ。実はねワシのじいさんの使った魔法が使えるんじゃよ。普段なら使ったりしないんだけどね。ちょいとじいさんのところに用ができたからね。おぬしらも連れて行ってやるよ」


老婆の言葉にキッドもホッと胸を撫で下ろす。



「ささ。善は急げじゃ。いくよ」


老婆に言われ二人は目を閉じる。

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