第21話 塔の老人
「そんなにコソコソせんでも来てることは分かっておるよ。小さき魔物が二匹じゃの?」
机の奥に腰掛ける老人に近づいていくと突然声を発した。
「おじいさん。目が見えないんじゃ?」
キッドは目が見えないのに自分達がモンスターだと老人が分かったのに驚いた。
「ふぉっふぉっふぉっ。こう何年も歳を重ねると目が見えなくとも誰か来たかくらい分かるようになるんじゃよ。お前さん方、何用じゃ?」
緑色のローブをまとった老人は平然としていた。
「あの、僕たちはモンスターなんですけど悪者じゃないんです」
シルスラは今までのバッカスの人々からの扱いを思い出しとっさにそう言った。
「誰もお前さん方を煮て食おうなんて思っとらんよ。それにあの魔法陣に受け入れられたんじゃから悪の心はないと思うしの」
老人は確固たるものがあったようだ。
「へ。どういうこと?」
キッドはなんのことやら分からないようだ。
それはシルスラも同じだった。
「あの魔法陣はの、不安や悩み、邪な心を持つ者が乗ってもここには運んでくれんのじゃよ。今まで色んな者がワシの力を得ようと塔に来たが魔法陣に受け入れられた者は最近じゃ勇者達くらいなもんじゃよ」
老人は説明を始めた。
「あの魔法陣にはそんな力が。あの、実は僕たちおじいさんにお願いがあって来たんです」
シルスラがそう言うと老人は椅子から立ち上がりシルスラの額に手を当てた。
そして老人は自分の長い髭をさすりながらまた椅子に戻る。
「なるほどのう。お前さん、ローズばあさんの知り合いじゃったか」
老人は全てを察したように言った。
ローズとはあの森の中の小屋に住んでいた老婆のことだ。
「よし、分かった。お前さん方をワシの魔法でそこまで運んでやろう。じゃが一つお願いがあるんじゃが」
老人は古びた手紙をシルスラ達に渡す。
「こいつをローズばあさんに渡してくれんかの。とても重要な手紙じゃからお前さん方は開けんでくれよ。呪われてしまうかもしれんからな」
老人から手紙を受け取ったキッドの手は呪いという言葉を聞いて震えていた。そして静かに頷いた。
「それじゃ、魔法をかけるから目を瞑っておくれ。あ、そうじゃ、ばあさんにワシは元気にやっておると伝えとくれ。ではいくぞい」
老婆はあの青い石を通じて全ての会話を聞いているのだがシルスラ達はそれについては何も言わなかった。
老婆の声もすることはなかった。
そして魔法がかかる。
目を開けると老婆の小屋の前に着いていた。
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