第20話 老人の住む塔
老婆の言っていた塔までは二人だけでもそれほど距離はなくすぐに到着できた。
「ねえねえ。近くで見るとけっこう高いね。こんなの登ってたら日が暮れちゃうんじゃない?」
塔の意外な高さに早くも泣き言を言い始めるキッド。
「どんなに大変でも諦めちゃだめです。頑張りましょう」
シルスラはもう泣き言は言わない。
そしてそのまま塔の内部へと入るため大きな扉を押し開ける。
鈍い音と共に扉がゆっくりと開いていく。
中は何もなく広い円の形の広間しかなかった。
シルスラは辺りを見回し始める。そしてあるものがないことに気付く。
「あれ。どこにもない」
シルスラはボソッと呟く。
「え。なになに。何がないの?」
キッドはなんのことやら分からない様子だ。
「階段ですよ。これじゃ上に登れないです」
そう。この塔には階段はおろかハシゴのようなものも何もなかった。上へと向かう手段が何もない。
すぐにシルスラは老婆に聞いてみようとしたがやめた。自分の力で上へ登る方法を考えようと決心したからだ。
そしてもう一度よく見渡してみる。
頭上はガルーダでなければ到底辿り着けないだろう高さまで壁が続いていた。
どうしたものかと視線を下に戻すと床の中央に何かが書いてあるのが見えた。
シルスラは近づいてみる。
「何かあったの?」
キッドもシルスラと後に続く。
床には円の中に複雑な文字や模様が描いてあった。
魔法陣だ。
「もしかしてここに乗ったら何かあるんじゃ」
この魔法陣が上へと運んでくれるとシルスラたちは確信した。
「あれ。何も起きないよ。やっぱりだめだよ。僕たちじゃガルーダさんは助けられない」
またキッドは諦める。
「なんでそうやって諦めちゃうんですか」
シルスラはキッドを小突いた。
「ガルーダさんはキッドさんのこと助けてくれたじゃないですか。今度は僕らの番ですよ。それにこのまま諦めたらあなたのおばあさんだって助けられない」
シルスラはいつもになく熱い口調で言う。
その言葉に何か感じたのかキッドは、
「ごめん。そうだよね。僕だってみんなを助けたい。この塔にその方法があるならよじ登ってでも上に行きたいよ!」
キッドの大きな声が塔全体に響き渡る。
その瞬間。魔法陣の描いてある床が揺れだす。そしてなんと床が宙に浮き始めた。
その魔法陣の描かれた床はどんどん頭上高くに登っていきあっという間に頂上まで到達した。
床の揺れが収まったのは小さな部屋の中だった。たくさんの本棚とそれに囲まれるようにある立派な机。そしてその机の奥に腰掛ける目を閉じた老人。
ここは塔の最上階でこの老人が老婆が言っていた人物であると二人はすぐに理解した。
二人は恐る恐る老人の近くまで歩み寄っていった。
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