第19話 二人旅

『これで聖声水を作れるねえ。さあ早くワシのところへ持ってくるんじゃよ』


老婆の声がそう言う。



「でもどうやって。僕たちはガルーダさんの背中に乗って今まで来たんですよ。かなりの距離になります」


シルスラは老婆なら何か小屋まで行く手段を知っているのかと思った。



『そんなもん。歩いてきたら良いじゃないか。何を悩んでおる』


老婆は何を当然なことを聞いているんだという様子で言った。



「でもでも、あと三日で小山で行ってそこからまたバッカスまで戻ってくるなんて無理だよ。なんとかならないの?」


キッドは時間がないということを強く言った。



『おぬしらはやる前から諦めるのかい。ワシにばっかり方法を聞いて自分たちじゃ何もできないのかい。ガルーダがいないとどうしようもないのかい。このままやつを放って置いて逃げちまうのかい?』


老婆は二人を責め立てる。



「そうだ。ガルーダさんなら僕たちの無理なお願いも嫌々だけど聞いてくれた。傷つきながら最後まで逃げないでいてくれた。それなのに僕たちはすぐに投げ出して人に頼ってばかり。そんなのダメだ。ガルーダさんと約束したんだ。裏切るわけにはいかない」


シルスラは一人でガルーダのことを思い返す。



「おばあさん。僕たち絶対に聖声水をバッカスまで持っていきます。見ててください!」


老婆の声でハッとしたシルスラは決意を伝える。



『ふっ。その意気さ。こんなところでおぬしらの冒険終わっちまったら楽しみがなくなっちまうよ。じゃあ一つ教えてあげよう。その滝を離れたら西の方角を見てごらん。塔があるはずさ。そこには目の見えないジジイがいるんじゃが魔法が使えるんじゃ。何かワシのところまで来れる歩いてくる以外の方法を知っておるかものう。行ってみなさい。んー、ワシ、優しいのう」


なんだかんだで老婆はアドバイスをくれた。




老婆の言う通り西の方角に塔が見えた。老婆の言葉を信じ二人は塔を目指し歩いて進んでいく。ガルーダのいない二人旅だ。

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