第18話 脱出
地下牢の階段を登ると明るい日差しが差していた。
相変わらず町人があちらこちらでごった返している。
違うのは衛兵がかなりの数配備されているということだ。
「どうやって町の外に出よう。こんなに兵士がいたら見つかっちゃうよ」
キッドが早くも不安がる。
そうこうしている内に向こうから衛兵が近付いてきた。
終わった。キッドはそう思った。
「こっちです」
シルスラはキッドに言うと水路に飛び込む。
キッドもそれに続く。
二人の飛び込んだ水音に気が付き衛兵が水路を覗き込む。
二人は水路の縁に溶けそうなほど張り付いた。
見つからないでくれ。二人はただその一心だった。
すると少し遠くから声がする。
「おい。何か動きはないか。まだ奴らの仲間がこの辺にうろついてるかもしれんからな。しっかり見守ってくれよ」
フレッドの父親の声だ。
「はっ。特にこちらは何も異常ありません」
衛兵はシルスラたちには気付いていない様子だ。
「あの化け物どもは三日後に処分するからな。他のもんにも伝えておけ」
フレッドの父親の言葉に一瞬キッドは声を出しそうになった。
「急ぎましょう。時間がない」
シルスラは言う。
そしてシルスラとキッドは水音を立てないよう水路を進んでいった。
幸運なことに水路は町の全てを通っており町の入り口近くまで進んで行くのは容易かった。
しかし町の入り口には当然ように衛兵がいるためどうしても出るのは難しそうだ。
「やっぱり無理だよ。見つかるに決まってる」
キッドの発言にシルスラもたしかになと諦めかけた。
そのとき水路を除く影が見えた。
影の正体はフレッドだった。
「あ、君は。僕たち君の声を取り戻せるかもしれないんだ。でもそのためにはこの町から出なきゃいけなくて」
シルスラは一か八かフレッドに助けを求める。
しかしフレッドは水路から離れていってしまった。
「やっぱりフレッド君も僕らみたいなモンスターは信用できないみたいだね。あのとき助けてあげたのに」
キッドが落胆しているとフレッドは再び戻ってきた。今度は大きな袋を持っている。
そしてその袋を水路に向かって広げた。
おそらくここには入れということなのだろう。
シルスラとキッドは顔を見合わせた後、頷き袋に飛び込んだ。
するとフレッドは袋を担ぎ上げ町の入り口まで進んでいった。
「フレッド坊ちゃんどちらへ?」
当然衛兵は声をかける。
しかし声の出ないフレッドは目で訴えるしかできなかった。だがその視線はとても力強いものだった。
「ま、まああまり遠くへ行かないようにお願いしますよ。町長に怒られちゃいますから」
フレッドの視線に負け衛兵はそう言った。
町から出てある程度行ったところでもう大丈夫だろうとフレッドは袋を開けた。
「ありがとう。君は町長の息子さんだったんだね。ちゃんと声が戻るようにするからね」
フレッドの目をしっかり見つめシルスラは言った。
フレッドに約束をし二人は滝を目指し歩き出した。
滝まではそれほど遠くなくすぐに到着した。
周りは草木がよく育ち、小動物もあちこちを走り回っていた。この滝の水がいかに綺麗なのか物語っていた。
その絶景に二人はしばらく口を開かずただ傍観してしまった。
「さ、早くあの水を汲んじゃいましょう」
シルスラはもう時間が少ないことを思い出し言った。
キッドは持っていた小瓶で滝の水を汲んだ。
するとまた老婆がキッドに持たせた石から声がする。
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