第17話 聞き覚えのある声

『ワシじゃよワシ。この前小屋で会った』


その言葉で三人は誰の声か理解した。しかしどこから声が聞こえるのかは分からないでいた。


『ほうれ。そこの坊主の袋の中を見てごらん』


老婆の声の通りキッドは袋を覗いてみる。

すると青白く光る石が入っていた。



「こんなの僕入れた覚えないよ」


キッドは驚いている。



『そりゃそうじゃろ。ワシがこっそり入れたんじゃから。なんかおぬしらの動向を聞いているのが面白そうじゃったからの』


声はこの石からするようだった。



『この石はね遠く離れた場所でもこうやって話ができる珍しいもんなんじゃ。じゃから今までの会話もぜーんぶ聞こえておるよ』



「で。なんだって今頃になってそっちから話しかけてきた?」


今まで老婆から話しかけてこなかったのは何故かガルーダは気になっていた。



『ああ。このままおぬしらがおっ死んじまうのが惜しいと思ってね。じゃからこうやって話しかけたわけじゃよ』



「てことは俺たちをここから出す手段でも教えてくれるのか?」


ガルーダは疑心暗鬼に聞く。



『まあねえ。要はあの人の子から真実を伝えてもらえれば良い訳じゃろ。あの子は声が出なくなる呪いをかけられているんじゃ。多分あのモンスター共に呪いをかけられたんじゃろ』


フレッドが呪いをかけられていたことにシルスラたちは驚いた。



「だからあの子は何も話してくれなかったんですね」


シルスラはようやく合点がいった。



『そうじゃ。その呪いは聖声水って薬で治すことができるんじゃ。それを作るにはおぬしらが今いるバッカスの近くの滝の水が必要なんじゃよ。それさえあれば全て解決じゃ』



「で。その水はばあさんが汲みに行ってくれるのか?」


ガルーダは気怠げに言う。



『なーに言っとる。おぬしらに汲んできてもらうに決まっとろうが』



「おいおい。俺たちの今の状況分かるだろ?」


ガルーダはだんだんイライラしてきていた。



『デカいおぬしは無理じゃろうな。でもそこのちっこい二人。おぬしらならその牢屋の鉄格子くらい簡単に抜けれるじゃろ。そこは人間を入れるために作られているからそーんなチビ共が入るなんて想定されとらんよ』


たしかに鉄格子の棒と棒の隙間は広くシルスラとキッドなら楽に抜けられそうだった。


今まで牢屋に入れられてしまったショックで三人ともそんなことにも気付かなかったのだ。



「あ、本当だね。抜けられた。で、でももし外にいるのが見つかったら今度こそ殺されちゃうよー」


キッドは今度は別の心配をし始める。



『どのみちそこにいたままじゃ殺されちまうよ。なら一か八か賭けてみんかい。さ、分かったら汲んでおいで』


老婆はまくし立てた。



「そ、そうですよね。じゃあガルーダさん。僕ら行ってきますからここに僕らがいないこと上手く隠してくださいね。お願いします」


シルスラは脱獄する決意が固まった。

キッドも同じようだ。



「へいへい。とか言ってそのまま戻ってこなかったらあの世でお前ら恨み続けるからな?」


ガルーダは冗談ぽく言う。



「まさか。絶対戻ります。信じていてくださいね」



「へっ。んなことは言われなくても信じるよ。途中で見つかんなよ?」


シルスラとガルーダにはいつしか信頼関係ができていた。

互いに目で意思を伝え合いシルスラとキッドは牢屋の階段を静かに登っていった。

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