第12話 ヒスイの町

町の中はバザーのため賑わっていた。あちらこちらで呼び込みの声が聞こえてくる。


「よう。お兄さん方、なんか買っていかないかい?」


シルスラたち三人にも声がかかった。



「ねえねえ、スカル隊長どこにいるか知ってる?」


キッドは声をかけられた屋台の店主に尋ねた。



「ああ、そういやスカル隊長来てたなあ。どうだい、うちで買い物してくれたらどこに行ったか教えてあげてもいいよ」


店主が言う。



「ったく。ちゃっかりしてやがるぜ」


ガルーダが言いながら適当な食材を手に取り金を払う。



「へへ、まいど。スカル隊長は今町長のところに行ってるよ。町長の家はここからまっすぐ行ったところにあるよ」


店主は教える。




町長の家はくり抜いた大木の一番奥にあった。

入るとすぐに応接間があり正面には大きなドアがある。


そのドアからなにやら声が聞こえてくる。



「たしかに納付を確認したぞ。ではまた来月来させてもらうからな。しかしここの住民は戦うことを忘れた腑抜けばかりだな。お前からも魔王様のために少しでも働くように言ってくれよ。人間を襲え。そして金を奪え。勇者は着々と力をつけているのだ。世界征服には金がいるのだよ」


おそらくスカル隊長の声であろう。



「へ、へえ。面目ねえです」


情けない声が聞こえる。



応接間のドアが開く漆黒の鎧を身にまとう背丈はガルーダよりも一回り大きな骸骨が現れた。

スカル隊長である。


「あ、あ」


三人はその威圧感に圧倒され言葉が出なかった。



「なんだ貴様らは。そこにいると邪魔だ」


スカル隊長は町長の家の入り口の前に立ったままでいたシルスラたち三人に退くように言った。



「次の徴収はルビタウンだったな?」


隣にいるもう一人の骸骨に聞く。こちらはスカル隊長にあるような威圧感はなかった。



「あ、あの。スカル隊長、お願いが」


キッドはようやく声を絞り出した。



「すまんが急いでいるのでな。ルビタウンまで来たらそこで話を聞いてやる」


スカル隊長はここでは聞くことはないとそのまま町長の家から去っていってしまった。



キッドはそのあと追うこともできず立ち尽くしてしまった。



「き、緊張したあ」


キッドは力が抜けた。


スカル隊長の去ったあとはシルスラたち三人と始末の悪そうな表情の町長が残った。



「い、いやあ、どうも。お客さんかな?」


小太りのモンスターが頭をかきながら言った。もはや町長らしさは感じられない。



「いや、僕たちスカル隊長に用があったんですけど」


シルスラが言う。



「あ、オラには用はなかったかあ。アハハ」


町長は言う。



「なあ徴収とかなんとか言ってたけどなんの話してたんだ?」


ガルーダが遠慮なく聞く。



「いやあ、オラ達モンスターは人間を襲って金を奪ってそれを魔王様に納めるでねえか。でもここのみんなは戦いたくなんかないのよ。んだから、みんなには商売をしてもらっていくらか税金としてオラに払ってもらってるんだ。それをスカル隊長に渡してるってわけでさ」


町長が説明する。



「なるほどな。それで腑抜けって言われてたわけだ」


ガルーダが納得した。



「やっぱり戦いたくないですよね。みんなで仲良く生活したいですよね」


シルスラは町長の肩を持った。



「あとはこの町が人間に襲われそうになった時に助けてもらえるように払ってるな。ここのもんは力がないでな。まあボディガード代みたいなもんさね。町の入り口にいた門番も魔王軍から派遣されたモンスターで普段は彼らに守ってもらってんのさ。この町は作物が豊富だから人間にも狙われやすいんさ」


町長は続けて言う。



「だからここは襲われた形跡がないんだね?」


キッドが言う。



「そういうことさね。あ、スカル隊長、ルビタウンに行くって言ってねがったかい。あんたらも行ってみたらどうかい?」


町長は話を変えて言った。



「言ってましたね。ガルーダさんルビタウンに行きましょ?」


シルスラの言葉をガルーダはもう否定することはなかった。



「おっさん。ルビタウンってのはどこにあるんだ?」


ガルーダが聞いた。



「あー、いやすまん。オラあんまり町の外のこと知らんでな。ほれ、オラも戦えないから」


申し訳なさそうに町長は言う。


「でも多分、門番が知っとるんでねえかな。聞いてみるとええ」


町長はなんとか面目を保とうとする。



「じゃあ、さっそく門番に聞きに行こうよ」


ソワソワしながらキッドは言う。



三人は門番のところへ向かう。

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