第10話 龍爪草

疲れが溜まっていたからか朝まで三人共皆ぐっすり眠っていた。


一番初めに目覚めたのはキッドだった。


老婆の姿は小屋の中には見えなかった。



キッドが小屋の外に出てみると老婆は庭の草木に水をやっていた。



「おや、ずいぶん寝てたみたいだね。他のもんはまだ寝てるのかい?」


キッドに気づいた老婆は尋ねた。



「うん。おばあさんの昨日のガルーダさんを治療したの見て思ったんだけど。おばあさんなら僕のおばあちゃんを治せるかも」


キッドは開口一番に言った。



「なんだい。あんたのばあさん、怪我でもしてるのかい?」


老婆は耳を傾けた。



「ううん。ドラクマ病って病気なんだけど治せないかな?」


キッドは聞く。



「そいつはワシの力じゃ難しいね。龍爪草を煎じてやらないと」


龍爪草とは例の魔王城付近にしか生えない薬草のことだ。



「やっぱりそうなんだ。僕ね、ガルーダさんにお願いして龍爪草を採りに行くことにしてるんだ。うまく採れるかな?」


この老婆なら知っているに違いないと思いキッドは聞いてみた。



「どうだろうね。龍爪草が生える一帯は魔王軍が抑えちまったようだからねえ。手に入れられるかはスカル隊長の許可がないといけないらしいよ」


人間であるはずの老婆がどこから仕入れた情報かは不明だがそう言った。


スカル隊長とは魔王軍幹部の一人だ。



「そんな偉い人が僕なんかに許可くれるのかな。なんだか不安だよ」


キッドは落胆する。



「それはおぬしの気持ち次第じゃろ。そんなにおぬしのばあさんを助けたくないなら諦めたら良いんじゃないかね?」


老婆はキッドに問う。



「僕、おばあちゃんを助けたい」


キッドは強く答えた。



「うむ。なら頼んでみることじゃな。噂だと今スカル隊長はこの近くのヒスイの町に来ているみたいじゃよ。行ってみたらどうじゃ?」


ヒスイの町はモンス村と同じようにモンスターが集まる町だ。



「うん。ありがとう。おばあさん」


キッドは明るく言う。



「なんだあ。そこにいたのかよ」


キッドと老婆の話し声に気が付きガルーダとシルスラも目を覚ます。



キッドは起きてきた二人に事情を説明した。



「うん。じゃあ次の目的地はそのヒスイの町だね」


キッドの言葉にシルスラがまず賛成した。


ガルーダも渋々頷いた。



遅い朝食を済ませたあと三人は老婆に見送られヒスイの町を目指した。

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