第8話 傷を負った怪鳥

「ガルーダさん。大丈夫ですか?」


シルスラはガルーダに尋ねる。



「いや、傷の方はなんとかなりそうだけどしばらくは飛べなさそうだ。すまん、迷惑かけるな」


傷薬を塗った薬草を傷口に当てているガルーダは言った。



「とりあえずこの森から出ようよ。またあいつらが襲ってくるかもしれないし」


キッドは昨日の人間達のことを心配していた。



「あ、ああそうだな。やつの魔法を受けたのはこの翼だけだから歩けるしな。んじゃ、そろそろ行くか」


ガルーダは痛みを隠し無理矢理に元気を出して言った。



「でもどっちに向かえば良いんでしょう?」


不安を隠せないシルスラは言った。



「あっちの方向に進んで行けばこの森を抜けられるだろ。さ、行くぜ」


ガルーダは北の方角をさした。



木々が鬱蒼と生えているからか朝のはずなのに薄暗く不気味な雰囲気だった。



「なんか気味が悪いよね。お化けが出そうだよ」


キッドは辺りをキョロキョロした。



「おいおい。モンスターがお化けを怖がってどうするんだよ。俺たちだって人間様から見たら同じようなもんだぜ?」


ガルーダは笑いながら言った。



「まあこんな薄暗いところにはずっといたくなんかないよな」


続けてガルーダが言う。



「当たり前だよ。お日様が見えるところで生活したいよ」


キッドはため息混じりに言う。



「でも人間が明るいところでばっかり生活するから僕らは好きでもないのに薄暗いところで生きなきゃいけなくなっちゃうんですよね」


シルスラもキッドに同調する。



「そうだよな。人間は勝手に俺たちが暗い洞窟や森が住処だって思ってるけど誰もこんなとこを住処にしたいなんて思っちゃいないわな」


ガルーダも二人と同意見のようだった。


そんなことを話していると目の前に小さな小屋が見えてきた。




「あ、見て見て。小屋があるよ。少しあそこで休んでいかない?」


まず小屋を見つけたのはキッドだった。



「でも人間が使ってる小屋なんじゃないですか。危険だと思いますよ」


シルスラはキッドに言った。


ガルーダも黙って頷く。シルスラと同意見のようだ。



しかしそんな二人をよそにキッドは小屋まで走っていってしまった。



「あいつが人間に襲われていた理由はああいう危機感のなさなのかもな」


ガルーダは納得したように呟いた。




小屋の中は誰もいないようだった。


キッドはそれを見て安心だと思い込み中へ入っていく。



残る二人もキッドを止めようと着いていく。


中は広くはないが一通り生活がここだけでできるくらいの設備は整っているようだ。



「やめましょうよキッドさん。ここ多分まだ人間が使っているはずですよ」


シルスラは早く小屋から出たく思った。



「そうだぜ。きっと今は出かけてるだけだぞ。早いうちにずらからないとやばいぜ」


ガルーダもシルスラに続けて説得する。



「えー、でもせっかくだからゆっくりしようよ。ほらベッドもあるよ。僕ベッドで寝たことないからここで寝てみたいな」


キッドははしゃぎながら言った。



シルスラとガルーダはため息をつく。



すると背後から音がした。



「誰じゃー。ワシの小屋に勝手に入るバカモンはー?」

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