ウィーザー
僕たちは喫茶店を出、店先で電話番号を交換した。
「一緒に行きたいところがあったら、電話して構いませんか?」
僕が訊く。
「ええ、わたしから誘うかもしれませんけど」
家までの帰路で僕は一束のクチナシの花を買った。僕は恋すると花を買う癖がある。
買った花をぶら下げて家に帰ると、書斎机の上の映画のチラシを手に取った。交換したその日に電話するのは嫌なので明日することにした。
アラームを止めて起き上がり、床を見ると昨日のクチナシが元気なく落ちている。昨日は花を花瓶に挿すのを忘れていた。
僕はそれを跨いで朝食の準備をする。
冷蔵庫を覗いてみるとベーコンと卵。とりあえずこれをコンロのフライパンに乗せ、コンロを点ける。焼けるのを待つ間にクチナシの花を花瓶に挿し、小さな出窓に置く。その窓から見える青天井は昨朝の天気を忘れたように燦々と夏の濃い日差しを飛ばす。
フライパンの油が跳ねるパチパチ、という音で我に帰った。
卵の下でベーコンが跳ねていた。皿に盛ると、ベーコンが焦げているのが見えた。
朝食を食べ終え、僕は彼女に電話をかけた。そして映画に一緒に行こうと誘った。彼女はまた承諾した。
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