第48話 エカテリーナ ②

捕まれたのは左の足首。

私は右足で女の手や指を蹴りつけてみるが、足首を掴む手は離れない。

ガッ

片手で私の左足首を掴んでいたハズの女は、いつの間にか両手で足首を掴んでいる。

私は腰の鞘から何とか片手で剣を抜いた。

「落ちろっ!」

私は足首を掴む女の手首に向かって剣を振り下ろす。

ガギッ

だが、剣は金属にでも当たったかの様な音を出して女の腕に弾かれる。

「はあっ? ・・・・このっ」

ガギッ・・ガギッ・・ガギッ!

ガギッ! ギィン! ギィン! ギィン! ギィン! ギィン!

「何・・なのよっ! 何でっ・・剣が・・弾かれ・・てるの!」

・・・ダメだ、剣で突いても斬り付けても私の攻撃は全部弾かれてしまう。

一体何なの!?

「エカテリーナ、女を振り落とす!」

ジャンは私が剣を叩きつけても効果が無いのを見ていたのでしょう。

「やって!」

中空に浮いているだけだったジャンは速度を上げながら上昇し始めた。

そして1000mほどの高さから降下を開始。

右へ左へとロールしながら降下速度を上げてゆく。

そして地面スレスレで地面と平行に移動する。

ガッ! ・・ゴガガガッ!

「離せ! 離せ! 離せ! 離せ! 離せ! 離せ!」

女は地面を引き摺られるけれど、強く握られた女の手は離れない。

ズジャッ! ゴッ!ゴッ!ゴッ! 

川辺の砂利を跳ね飛ばし岩に当たるが、女は私の足にぶら下がったままだ。

業を煮やしたのかジャンは街壁に女を叩きつける。

ズゴォン!

ボグッ!

「ぎゃあああああっ! 痛い! 痛い!」

人間をぶら下げた状態で壁に当たった衝撃に私の足が耐えられなかった。

「うあああぁぁぁーーーーっ」

足首にぶら下がる女の重みで足の関節からは途轍もない痛みが襲って来る。

「止まって! 止まれジャン!」

私がジャンに向かって叫ぶと、地面から30mほどの高さの中空でジャンは停止した。

「脚が脱臼したのよっ! 痛い痛い痛い痛いっ!」

停止した途端、私は服を掴まれた。

「あっ、えっ!?」

脱臼した脚から重みが消えた事で痛みが軽くなる。

だが、今度は背中側から胴を足で挟まれガッチリとホールドされてしまった。

「くっ」

何とか手放していなかった剣で私の腰をホールドしている足に向かって突き立てた。

ガギッ

「またかっ」

手首と同様に剣は金属音に弾かれた。

「さて、こちらの番ですね?」

そんな言葉と共に私の顔に女の拳が叩きつけられた。

ゴッ!

「ごのっ!」

ゴッ!

剣を振り上げようと

ゴッ!

ゴッ!

ゴッ!

ゴッ!

ゴッ!

・・・・何でこの女の拳はこんなに硬いのよ。

1発殴られる度に意識が飛びそうになる。

私は剣を握ってはいられなくなり、剣は右手から滑り落ちた。

「ジャンというのは飛んでいるあなたですか?」

女はジャンに向かって声をかけた。

「・・・・・」

けれどジャンは答えない。

ゴッ!

ゴッ!

すると、目の辺りと鼻に拳が振るわれた。

グジャッ!

どうやら、ジャンが無言でいるから私が殴られているらしい。

瞼が腫れたのか左目の視界が下半分になってしまった。

「貴方がジャンですね?」

「・・・・・」

ゴッ!

ゴッ!

ジャンの返事が無いからか、再び女の拳が私に振るわれる。

「ゴフッゴフッ!」

抜けたのか折れたのかは判らないが、私は飲み込みそうになった歯を咳き込みながら吐き出した。

「貴方が・・」

「私がジャンだ!」

「地上に降りて頂けませんか?」

「断る」

「この方の命がかかっていますけど、よろしいのですか?」

「そうなった時点でお前も地面に叩きつけられて死ぬことになるぞ?」

「あら、お仲間を見捨てるのですか」

どうやら、女は私を盾にしてジャンを地上に降ろそうとしているらしい。

「お前、何者だ?」

「・・・・」

女はジャンの問いには答えずに私の肩に足を掛けて私の左腕を掴むと、ジャンの手首に向かって腕を伸ばす。

「チッ・・・悪いな、エカテリーナ」

あと数センチという所でジャンの私を掴んでいた手が離された。

女と私は地上に向かって落下してゆく。

「ア゛・・ア゛・・」

だが、強く殴られ過ぎて声も出せない。

数秒の浮遊感の後、地面に叩きつけられた。

ゴッ! ドゴッ!

私の意識はそこで途切れた。




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異世界リベリオン 80000太郎 @80000tarou

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