第47話 エカテリーナ
何なのよっ! この女達は!
アラートのスキルが発動していなかったら石は私に当たっていた。
まさか、聖人なの?
石を投げた女はまた足元の瓦礫をひろっている。
あの女、あれを私に投げつけて来るつもりね。
もう1人の女が私に向かって走りだした。
「チッ・・・」
私は不利を悟ると、足元に転がる協力者の男の背に剣を突き立てた。
ザクッ
「んんっ!」
背中側から刺したので致命傷にはなっていないかもしれないが、手当もせずに放置すれば確実に死ぬハズだ。
この協力者の男が女達と知り合いであれば、足止めぐらいにはなるかもしれない。
協力者の男に突き立てた剣を引き抜くと、私は急いで門壁の階段に向かって走った。
「シャリア!」
「はい!」
どうやら、石を投げて来た女はシャリアというらしい。
シャリアと呼ばれた女は、協力者の男の傍らでしゃがみ込む。
どうやら治療を優先するらしい
よし、石投げ女の足止めが出来た。
階段を1段飛ばしで登りきると、壁上へと踊り出る。
追って来る女から少しでも離れる為に、私は階段に背を向けて壁上を走りだした。
マテウス! ジャン! あの杖の男と黒人女は!
広場に目をやると、杖の男を囲む様にして兵士の死体が転がっている。
そして、西門に近い場所にはマテウスの首を持った黒人女が立っていた。
・・・あの騒がしい男は死んだのね。
っ!?
まさか、ジャンも!?
広場の周囲を見渡してジャンの姿を探す。
すると、ジャンは倒れている兵士2体を掴んで浮き上がった所だった。
よかった、ジャンは生きている。
あいつが生きているならこの場から逃げ出せるわ。
「ジャン!」
私の声が聞こえたのか、2人の足首の無い兵士を連れてこちらへと飛んで来る。
「何だソイツは!」
私が壁上を女に追いかけられている事を言っているのだろう。
「後ろっ! な、何とか・・してっ!」
「わかった!」
ジャンは一度大きく離れると、上空を旋回して私を追いかける女に向かって飛んでゆく。
「そらっ」
ジャンは掴んでいた兵士の1人を私を追う女に向かって解き放った。
「うあぁぁぁーーーっ!」
投げ出された兵士は大声を上げて私を追う女に向かってゆく。
ゴバキャッ!
兵士は女を巻き込む様にして壁上の石壁に転がった。
「やった・・・の?」
私は駆けていた足を止めると、追いかけて来た女の様子を窺う。
ブンッ! ・・・べシャッ!
すると、女に覆いかぶさっていた兵士が壁上の石畳に投げ出され、奇妙な恰好で止まった。
「仲間がいましたか」
女はこちらを睨みつけながら立ち上がろうとするが、そこへジャンの放った二人目の兵士が再び女へとぶち当たる。
ドグシャッ!
砲弾の様に飛んでいく兵士が叫び声を上げていなかったのは、既に事切れていたからなのだろう。
私を睨みつけていた女は、避ける事も出来ずに兵士の砲弾を正面から食らった。
ジャンの飛行速度は同行者2名を連れていても、その時速は100kmを切る事は無い。
これで私を追いかけて来たこの女もただでは済まないだろう。
そう思って女の様子を見ていると、再び兵士が石畳に投げ出された。
・・・グシャッ!
女は血まみれになりながら立ち上がる。
まさか、この女も聖人なの!?
「ジャン! 逃げるわよ!」
私は手を上げてジャンを呼んだ。
冗談じゃない! こんなの相手にしてられないわ!
高速で旋回して来たジャンが目の前の中空で急停止をすると、私の手を取った。
「させないっ!」
中空に浮き上がる私に向かって、走り込んで来た血まみれの女が飛びついて来た。
ガッ!
っ!? 足首を掴まれた!?
「ぐっ! 離せっ! このっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます