第45話 諜報員ラッセル ②
私はサーベルを片手に転移者エカテリーナに対して半身に構えた。
対するエカテリーナは手に持っているステッキから細身の剣を取り出すと、剣先をこちらに向ける形で低く構える。
・・・仕込み杖か?
私は上段に構えた剣をエカテリーナの細身の剣に向かって振り下ろした。
剣を払い聖人エカテリーナの懐に飛び込む為だ。
ホヒュッ
しかし、振り下ろした剣は空を切った。
その僅かな隙をついてエカテリーナは剣を持つ右腕を目一杯に伸ばして、こちらへと低く踏み込んで来る。
「くっ」
細身の剣の先端が眼前に迫っていたけれど、戻した剣で辛うじて剣の腹を弾く事が出来た。
ガギィッ!
エカテリーナは剣を引くと、踏み込んだ距離と同じだけ下がってゆく。
「あら、それなりに使えるのね」
様子見のつもりで軽く払う程度の力加減にしていたから、私はすぐに剣を戻す事が出来たのですが、ああもアッサリと避けられるとは・・・
「盗賊に襲われても対処できる程度には、使えるつもりですがっ!」
今度は剣を上から大振りにエカテリーナに向かって振り下ろす。
だが、これはフェイント。
私は振り下ろした剣を細身の剣の横をすり抜けさせると、素早く切り返して細身の剣を跳ね上げる様にしてぶつける。
ホヒュン
「えっ」
金属を弾く音は聞こえず、剣が空を切る音だけが聞こえた。
フェイントを見切られた!?
その隙を見逃さず、エカテリーナは低く前に踏み込んでくる。
「そらっ」
エカテリーナの剣が私の右肩に刺さった。
「うぐっ」
私は剣を戻しエカテリーナの伸びきった腕に叩きつけようとするが、エカテリーナは刺さった剣をすぐに引くと元の位置まで戻ってしまった。
これは・・・
一度目は剣を払うタイミングを完全に読まれて攻撃を合わせられた。
二度目は剣を叩きつけるフェイントとその後の斬り上げのタイミングに合わせて攻撃をしてきた。
・・・攻撃は完全に読まれている。
エカテリーナのスキルは"占い"の系統なので、聖人ケイト様のみたいに相手の考えを読むスキルではないハズ。
だとすると、あれはすぐ先の未来を高確率で占う様なスキルのたぐい。
・・・先に攻撃を仕掛けるのはマズい。
私は剣を中段に構え、エカテリーナの攻撃を待つ事にした。
すると、エカテリーナも動かなくなった。
エカテリーナとの睨み合いだ。
「フン・・・実力勝負ね。いいわよ」
エカテリーナが体勢を低くすると、こちらに向かって突きかかって来た。
「シッ!・・シッ!・・シッ!」
細身の剣による突きの三連撃を剣で何とか受け流そうと試みたが、弾ききれなかった突きの一撃が腿に刺さった。
「ぐあっ」
しまった! この聖人エカテリーナはスキル無しでも十分強い!
杖なんて持っていたから、自分にもやれると思ってしまった。
「貴女に言っても判らないでしょうけれど、私ってサーブルのゴールドメダリストなのよ」
細身の剣による突きを剣で弾いてみても、角度を変えてすぐに突きが襲い掛かって来る。
「シッ!・・シッ!・・シッ!」
くうっ、また3連撃か!
防いで弾いて・・・これは避けられない!
先程突き刺されたのとは反対の腿に聖人エカテリーナの突きが刺さった。
「あぐっ・・」
近距離まで近寄って来たエカテリーナに対して剣を横薙ぎに振るってみたが、エカテリーナはバックステップで私の剣を軽々と避けると、すでに元の距離にまで戻っている。
ダメだ、足が動かない。
血が腿に開けられた傷口からドクドクと流れ出て来ている。
この状態では、走って街まで逃げるのは難しいか・・・
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