第36話 西門

『大体わかったわ』

『どうだった?』

『ラッセルが西門の外へ出るのを確認したら、門を固く閉じて街に戻らせないのがそこの20人の役目らしいわ』

『ん? ラッセルに手出しはして来ないのか』

『門を出るなら見送る様に言われているみたい。ただ、ラッセルが街中に逃げ出そうとしたら、追いかけて殺せって命令されているわね』

『ラッセルを捕まえるじゃなくて問答無用で殺すつもりか・・・』

『手間をかけてラッセルからわざわざ聞き出さなくても、私やクロスの行方ぐらいまスキルで探せるんでしょ』

なるほど、人探しに占術のスキルってかなり有用なんだな。

『なら、あの兵士達はどうする?』

『逃げれば街中まで追いかけてくるつもりだし、あの兵士達は私達がアイテムボックスから出て倒すしかないわね』

ケイト1人のサイコキネシスのナイフだけじゃ、何人かの兵士を道連れに出来る程度だろう。

俺もアイテムボックスから出て戦う必要があるな。

夜であればケイト1人でも兵士20人ぐらい余裕なのに・・・

『どこで戦う?』

『市民を巻き込みたくはないし、ここでいいでしょ? 住人はどうせ西門なんて使わないんだし』

『まぁ、そうだな・・・』

ラッセルが時間稼ぎをしている間も、西門へ向かうこの1本道を通る者はいない。

恐らく、商人以外の西門の出入りは厳しく制限されているんだろう。

キグナス連合王国側の住民が自由に国境の川を渡れてしまっては、連邦側の国に行ったきり戻らない可能性があるからだ。


『門の外の様子はどうなんだ?』

『橋の前に兵士100人と転移者が3人、私達を待ち構えているわ』

『げっ、転移者が3人もいるのか・・・』

容積の増えたアイテムボックスを地面に張り付ければ、兵士の100人ぐらい何とでもなる。

開け閉めを一度にすれば、死者を出さずに無力化する事が出来るだろう。

・・・問題は、3人もの転移者だ。

転移者は何らかのレアスキルを神様から貰って、こちらの世界に降臨している存在だ。

アイテムボックスを地面に張り付けるだけじゃあ、転移者の持つレアスキルを使って避けられる可能性もある。

多少危険になる可能性もあるが転移者とやり合う前に、あの20人の兵士でジョインのスキルの使用具合を確かめておきたい。

使い慣れておけば転移者ともやり合えるハズだ。

『ラッセルに伝えてくれ、俺もアイテムボックスから出てスキルで戦う』

『例の罠?』

『いや、ジョインのスキルを対人で使っておきたい』

『大丈夫なの?』

『移動中にアイテムボックスの中で振り回していたから大丈夫だ』

『自信があるなら、いいけど』

「ラッセル、私達はアイテムボックスから出るから屈んで貰える?」

「どうなさるので?」

「私とクロスであの20人の兵士を倒すわ」

「・・・分かりました。お気をつけて」

「ラッセルは私達がアイテムボックスから出たら、私達から離れて身を守っていて」

「はい」

俺とケイトはラッセルの服のアイテムボックスから這い出した。

すると、兵士達の視線が俺とケイトに集中する。

まぁ、ラッセルの服の中から俺とケイトが出て来たのは見ていただろうしな。

俺達の姿を見てどう動くかな。

『向こうはかなり迷っているみたいよ。ラッセルを誘導する役目なのにターゲットを見つけちゃったんだから』

『なら、行くか』

俺は移動中に作っておいた杖でバランスを取りながら、兵士達に向かって歩き出した。

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