第24話 パワーレベリング あれからの日にあった出来事
「オラッ! さっさと歩けっての。日が暮れるだろうがっ!」
そう怒鳴りつけられた上で蹴り飛ばされ、俺は床に転がった。
俺を蹴りつけて来たのはボルクという名の17歳の冒険者だ。
「おい、ボルクいい加減にしろ。お前がコイツを転ばせてるから全然進めねぇじゃねぇか!」
「な、何で俺が怒られなきゃいけないんだよ! 遅いのは全部コイツの所為だろ!」
「なら、お前が担いで行け!」
「ふざけんなっ! こんなヤツ置いて行けばいいだろ!」
「お・ま・え・は・バカか? ああ? コイツのレベルを1つ上げるのが今日の仕事だろうが! コイツを地下5Fにある狩場の前まで連れて行かなけれゃ仕事にならねぇんだよ!」
「知るか! そんな事」
「お前はコイツの近くに寄るな。前を歩け!」
「あっそ」
俺は杖を支えにしてノソノソと起き上がる。
「おい、行くぞ」
俺に声をかけたのはこの冒険者グループのリーダーであるデガーワという男だ。
この世界にはかなりの数のダンジョンがあり、ダンジョンからは魔石と鉱石がドロップする。
なので、ダンジョンの周りには宿が出来て商店が出来、やがて大きな街や都市へと発展するのだ。
このセルカーク王国の第二の都市ビエラもその例外ではない。
俺は杖を突きながらデガーワの後を追いかける。
その後、ボルクのちょっかいは無く、一時間をかけて5Fの狩場とやらに着いた。
「お前はここで待ってろ。いいか、前に出るなよ? フリじゃねぇからな?」
そう言って俺の側から離れて行った。
暫く待っていると、奥の方からこちらへ向かってボルクが走って来るのが見えた。
「来るぞ! ホーンガゼルが1だ!」
ボルクの後をホーンガゼルが1匹追いかけて走って来る。
ホーンガゼルという魔物は群れている事が多く、一匹だけを狩場まで引っ張るのは難しい魔物だと聞いている。
ボルクがデガーワの横を走り抜け、集団の後ろに回った。
デガーワがホーンガゼルの正面に立ち、大きな盾を構える。
ドガンッ!
ホーンガゼルの2本の角の内の1本が折れ、ホーンガゼルが停止した。
「足を狙え!」
デガーワの号令で残りの連中がホーンガゼルの足へとそれぞれの武器を叩きつける。
誰もホーンガゼルの後ろに回り込んだりはしない。
なぜなら、ダンジョンの魔物は決して逃げないのだから。
ガツッ! バキッ! ゴッ!
「よしっ、足は壊した。クロス! 来いっ!」
槍を杖代わりにして前に出ようとした所で、杖代わりにしていた槍を払われた。
ガッ
『なっ!』
俺はその場に倒れ込んだ。
「へっ、ノロマが」
倒れた俺の横に立っているのは鞘に入った剣で俺の槍を払ったボルクだった。
俺はボルクの足元に手を付くとスキルを発動する。
『アイテムボックス、オープン』
すると、ボルクの足元にアイテムボックスが口を開き、ボルクが中へと落ちていく。
「うおっ」
『アイテムボックス、クローズ』
「おいっ! 何してるんだ! 速くトドメを刺せ」
倒れ込んでいる俺にデガーワが急かす。
俺は急いで起き上がると、倒れ込んだまま暴れているホーンガゼルに向かって槍を突き出した。
ザグッ
「キョーーーッ」
「動かなくなるまで何度でも刺せ!」
デガーワの指示を受けて俺は何度も何度も槍をホーンガゼルへと突き刺す。
すると、ホーンガゼルは動きを止めて黒い霧となって消えた。
ホーンガゼルのいた場所には白い石と黒い石が1つずつ残されている。
魔石と鉄鉱石だ。
俺が元の場所に戻ろうと槍を杖代わりに2・3歩進んだ所で、デガーワが俺に声を掛けて来た。
「おい、ボルクはどこだ」
口のきけない俺は首を傾げてとぼける。
「おい、ボルクを戻せ!」
デガーワの言葉を聞き流していると、俺の身体に激痛が走る。
ジッバチッ・・ジジッ!
「ガッ・・カハッ」
全身の激痛で声の出せない俺の口から声にもならない音が漏れ、その場へうつ伏せに倒れた。
『くそっ、奴隷の首輪を発動させやがったのか』
そんな俺の元へデガーワがやって来た。
「おい、ボルクを戻せ。もう一回食らいたいのか?」
俺はデガーワに頷いて見せると、地面に触れている手でスキルを発動した。
『アイテムボックス、デリート』
すると、目の前にアイテムボックスから吐き出されたボルクが地面の上に投げ出された。
「うおっ!」
一瞬何が起こったのか理解できなかったのか呆けていたが、倒れている俺の姿を見てボルクは顔を真っ赤にした。
「おい、やめろ」
デガーワの制止の声も聞かず、ボルクは俺に掴みかかる。
「コイツ、殺してやる!」
握りしめた拳で俺を殴りつけた。
ゴッ!
動けない俺は避ける事も防ぐ事も出来ない。
ゴッ!
くそっ、この野郎!
「やめろ! バカ野郎!」
俺に馬乗りになっていたボルクがデガーワに蹴り飛ばされる。
「何しやがる!」
「テメーが先に手を出したんだろうが! ギルドへの違約金と請求される治療費はお前の分から引くからな!」
「なっ! 何でだよ! コイツ喋れねぇんだから、違約金も治療費も請求される訳がねぇだろ」
「だからお前はバカなんだよ。筆談すりゃ一発だ」
「ギルド職員なんてそこまでしねぇよ!」
「鼻血も出てるし口も切ってるだろ、貴族案件の依頼なのにそんなのをほっとくギルド職員なんてはいねぇよ! 今日はもう帰れ」
「な、なんだと」
「後はお前抜きでやる。とっとと行け」
「ふっざけんな! 俺達が苦労して弱らせた魔獣に毎回トドメを刺すだけのヤツを庇うのかよ!」
「それがパワーレベリングのギルドの依頼だって言ってるだろ!」
「こうなったら、俺がコイツをここで殺してやる! そうすりゃ証拠も残らねぇ」
「おい! やっぱりバカはダメだ、縛り上げろ!」
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