第22話 夜の路上
街を出る時に門番に「夜に街の外へ出るもんじゃない」と引き留められたが、ラッセルが結構な金額のお金を門番に渡すとアッサリと街の外へと出してくれた。
暫くの間、街道を進んだが追っ手の来る様子は無い。
どうやら、宿屋の従業員は兵士の詰所に駆け込んで俺達の事を報告したりはしなかった様だ。
ま、ヘタ告げ口をして俺達に恨みを買うのが怖かったのだろう。
俺達が出て行くまで黙ってどこかに隠れていれば安全なのだし。
魔道具のランタンを持ったラッセルが夜の街道を歩き、俺とケイトはラッセルの上着にくっ付けたアイテムボックスの中だ。
ラッセルが馬に乗れると言っていたので馬の購入も考えたが、馬に乗って夜に移動が出来る訳でも無いので、購入の話は見送りになった。
まぁ、夜の内は追っ手も動けないだろうしな。
『さっきの兵士でレベルが上がったかどうかの確認はしたか?』
『あ、忘れてた』
暫くの間ケイトは黙っていたが、突然驚きの声を上げた。
『凄いわ! レベルが4つ上がってレベル20、テレパシーがレベル20でサイコキネシスもレベル10になったわ』
『おお、やっぱり兵士はカルマをため込んでるからレベルの上りが良いんだな』
『そうね。もう兵士が経験値にしか見えなくなるわ』
それは人としてダメだろう。
『テレパシー範囲が20m、サイコキネシスの範囲が6m、扱える重さが500gになったわ』
『サイコキネシスの扱える範囲と重さが増えたのは心強いな』
6mといったら結構な範囲だ。
軽い武器ぐらいならスキルで扱えるだろう。
『刺突剣ぐらい扱えるかしら』
『それなら短剣を二本扱えた方がいいんじゃないか?』
二方向から同時に短剣を飛ばせば、避けるのは難しいだろう。
『あ、それいいわね』
『兵士の短剣があるから、それを使えばいい』
『そうね』
「ラッセル、私も歩くから少ししゃがんで」
「あ、はい。どうぞ」
まぁ、夜だしケイトが歩いていても問題ないだろう。
ボックスから出て来たケイトに、死体の中から回収しておいた短剣を2本を渡す。
「スキルの扱いを歩きながら練習するだけだから、ラッセルは普通に歩いていていいわよ」
「わかりました」
レベルが上がった事や久しぶりの外というのもあってはしゃいでいたケイトだが、1時間もするとアイテムボックスの中へと戻っていた。
『ダメだわ。完全に運動不足ね』
『2年近く牢屋暮らしだったんだから、仕方ない』
『少し休んだら、リハビリを兼ねてまた歩くわ』
『俺もそうしたいけど、足が遅いからな・・・』
左足の足首から先はアキレス腱を切られているから、もしも杖無しで歩けば亀並みのペースになるだろう。
逃避行の間は誰かの移動に寄生するしかないのが現状だ。
『そんなのは足が治ったら幾らでも歩けばいいのよ、そのぐらい付き合ってあげるわ』
『そうか、ありがとう』
「・・・ラッセル、少し止まって。また歩くわ」
「あ、はい」
ケイトはラッセルを呼び止めるとアイテムボックスから出て再び歩き出した。
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