第16話 計画
翌日、朝早くに奴隷部屋を開け閉めする音が聞こえて来た。
ケイトが予定通り、冒険者を連れてパワープレイに行くのだろう。
『レベル上げに行ってくる』
『ああ、該当者が見つからなかったら、外の情報だけでもいいからな』
『分かった』
ケイトが今回の外出で何か見つけて来てくれるといいんだが・・・
俺は椅子に座ると今朝の魔術具作成のノルマをこなした。
ギィー・・バタン、ガチャガチャ
奥の奴隷部屋を開閉してカギを掛ける音が聞こえた。
パワーレベリングを終えたケイトが部屋に戻されたんだろう。
『今戻った』
『ああ、どうだった?』
『時間はかかったけど、レベルは上がったよ』
『そうか、おめでとう』
ケイトのジョブレベルは15だったから、PSI能力者LV16になったって事か。
『ありがとう・・・ああ、そんな事より面白い人を見つけた』
『面白い?』
『街の中のですれ違う人を片っ端からスキルで探ってみたんだけど、協力してくれそうな人を見つけたわ』
『おお!』
『リンクス国から来た諜報員で、この城を出入りする馬車を調べてたの』
『へぇ、あの国の諜報員か』
リンクス国か・・・
あの国には降り立ったその日の内に攫われたから、あの国に関する知識なんて殆ど無いんだよな。
アランは俺を攫った後に街のあちこちに火を点けたって言っていたが、あの後はどうなったんだろう。
『その人、この国を嫌ってるみたいだし、密告される事は無さそうよ』
『・・・そうか』
まぁ、あの国の者ならば、こちらの事情を知れば協力は得られそうか・・・
それにケイトのスキルがあれば相手の考えも判るし、裏切られる事を心配する必要は無いだろう。
『私のテレパシーの届く範囲が16mになってるから、この奴隷部屋から近い西の城壁の外まで届くのよね。今晩その城壁の近くへ来る様に言ってあるわ』
『今晩?』
『ええ、こんな所一日でも早く出たいもの』
まぁ、ケイトは俺よりも長く奴隷部屋に監禁されてるんだし、こんな所から一日でも早く出たいって考えるのは当たり前か。
ケイトも同じ異世界人だが俺とは少し立場が異なる。
俺の降臨したリンクス国はキグナス連合王国とは敵対的な関係という訳ではない。
なので、攫って来た俺がアルクーダに幽閉されている事は当然秘密にされている。
もしもリンクス王国にバレれば戦争になりかねないからだ。
ケイトの場合はキグナス連合王国の中で立場の弱いニヒトリーデ王国という属国に降臨した為に、キグナス連合の宗主国であるアルクーダ王国から御使いの供出を求められたという。
ニヒトリーデ王国からアルクーダ王国へと所有権が移ったが、ケイト自身に問題があるという事でここに幽閉される事になったらしい。
その状態でもう2年にもなるという。
『・・・分かった。交渉は任せる』
俺はケイトと俺のスキルを活かした脱走計画をケイトに伝え、協力者との交渉をケイトに託す事にした。
『おはよう』
翌朝、俺が目を覚ますとケイトがテレパシーを送って来た。
『おはようケイト、交渉はどうだった?』
『今夜決行するわ』
今夜か・・・
昨夜は満月に近かったぐらいだし、今夜なら月明りの下で行動出来るだろう。
『時間は?』
『2~3時ぐらい。協力者には城の通用口が見える場所でその時間には待機して貰う事になってる』
『その後の予定は?』
『朝一番に出るクラウル行きの乗合馬車に乗って街を出る事予定よ』
なるほど、どうやら協力者は俺の計画に乗っかってくれたらしい。
『それじゃあ今夜だな』
『ええ』
この日は魔道具作成のノルマをこなし、サッサと寝た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます