第5話 異世界へ
一面が真っ白な世界に自分が立っている事に気が付いた。
なっ!?
白い世界には黒い線の輪郭が現れ、徐々に白さは無くなってゆく。
視界に映るのは、青い空、白い雲、森の木々、一面に広がる草原だ。
ここが異世界か?
近くに生えている木に近寄り、木の根元に落ちている木の葉を拾い上げてみた。
木の葉は横幅も広くサイズも大きい。
針葉樹ではなく広葉樹か。
周囲を見渡してみるが、どの木も幅の広い大きな葉を付けている。
ここが北の寒い地域であれば針葉樹が中心になるハズだ。
気候も温暖に感じるし、野宿をしても凍死はしないかも。
さて、周囲の確認をしないと。
まず、空に見える太陽は一つで月は・・・んん?
月が太陽にやたらと近い位置にあるのが気になるけれど、この星にも月はあるみたいだな。
尤も、月が1つだけじゃない可能性もあるけど・・・
周囲の地形はどうだろう。
遠くの方まで見渡してみるが、視界の範囲に山は見えない。
地平線も見えるしかなり大きな平原みたいだ。
その平原に長い切れ間があり、そこに水が流れているのがここからでも確認できる。
あれは、川かな。
遠くの方には木の柵で四角く囲われた土地がいくつも見える。
お、あれは畑かな?
どうやら、人里がかなり近いらしい。
村なのか町なのかは分からないけど、現地通貨は貰っているし後で行ってみよう。
でも、その前に色々と確認しておかないとな。
「ステータス・オープン」
A4サイズぐらいの縦長で長方形をした、薄く青い板状の物が目の前の中空に現れた。
「これがステータス画面か」
画面上には白い文字が表示されている。
黒須裕二 ヒューマン ♂ 24歳
HP 100%
MP 20
所有ジョブ
スペーサー LV 1
体力 52
腕力 45
脚力 55
敏捷 38
器用 75
動体視力 67
知識 86
知能 72
魔力 78
精神 32
運 5
マナ回復 10
所持スキル
ボックス LV 1 30×30×30
魔術
ー--
精霊術
ー--
転職可能ジョブ
ファーマー、ソルジャー、カーペンター、マジシャン
おお、なんかゲームみたいなステータス画面が表示されてる。
しかも日本語だ。
世界語は英語とか聞いていただけに、ステータス画面がカナ交じりの日本語なのはありがたい。
えーっと、名前・性別・年齢は合ってる。
HP100%ってのは健康状態と体力的な事かな?
MP20ってのも多いのか少ないのか判らないな。
ジョブは・・・スペーサーLV1?
文字の上に指をやると、スペーサーの部分の文字の色が黄色に変化した。
タップ出来るみたいだな。
黄色くなったスペーサーの文字をトントンと二度指で突いてみた。
すると"スペーサー"と書かれたページに移動した。
スペーサー(空間魔法士) 区分:SSR ジョブNO.32
・異空間との接点を作り出して利用する事の出来るジョブ
・空間認識力が高く知識・器用の数値の高い者が就ける
・転移者専用のジョブ
●ボックス
・異空間に物を収納する能力
・異空間に収納した物の時間は停止する
・ボックスのサイズはスキルレベルが上がるごとに大きくなる
・扱えるボックスの数はスキルレベルが上がると増える
・「ボックスオープン」の言葉で開き「ボックスクローズ」で閉じる
・ボックスは術者の指定した場所に「ペースト」で張り付けられる
・ペーストしたボックスを「インディペンデント」で切り離すと他者にも扱える
ふーん、空間魔法士か。
「ボックスオープン」
目の前に真っ黒な30cm×30cmほどの正方形が現れた。
うおっ!
黒い正方形はステータス画面と同じ様に、目の前で浮いている。
縁を摘まんでみると、お?・・・動かせる。
パタパタと振ってみるが、空気抵抗を感じない。
裏側はどうなってるんだ?
裏返しにしてみると、無色透明で何も無い様にしかみえない。
裏側からは見えないとは、ホントに空間の切れ間なんだな。
俺は黒い正方形の中に手を入れてみる事にした。
手は中に吸い込まれていくが、すぐに壁に突き当たった。
ん? 小さいな・・・
中の奥行・幅はどちらも外枠と同じ30cmほどだった。
外枠を引っ張ってみると、黒い正方形は長方形になって面積が広がった。
おお
中はどうだろう?
手を入れてみると先程よりも奥行が、全然浅くなっている。
あー、幅を広げても奥行が狭まっちゃうのか。
引っ張っても長方形に変化するだけで、体積は変わらないみたいだ。
ボックスの1つの辺が30cmぐらいだし、ステータスの所に表示されていた30×30×30の表示はこれの事かな。
つまりボックスの一辺が30cmで、30cm×30cm×30cmの単位を省略した表示が、ボックスのレベルの横に表示されてるって事ね。
ボックスのサイズはスキルのレベルが上がると大きくなるみたいだし、このサイズが気に入らなければレベルを上げるしかないって事か。
おっと
色々と試してたら、結構時間が経っちゃったかな。
そろそろ街に行ってみよう。
取り敢えず、情報が欲しい。
この世界で暮らすのに何が必要なのか、どうやってお金を稼ぐのか。
物の値段とか、知りたい事が沢山ある。
あの畑に向かって移動しよう。
魔獣が出る世界であれば、畑の近くに村や町があるハズだ。
畑に向かって歩き出した所で、畑の方から馬が2頭こちらの方へ向かってくるのが見えた。
どうやら、俺に気が付いてるみたいだな。
俺は万が一も考えて、ナイフの位置を確かめておく。
2頭の馬にはそれぞれ人が乗っているのが判る。
2頭の馬の騎乗者は、俺の手前20メートル程で馬を止めると馬から降りた。
そして、こちらへ馬を引きながら近づくと大きな声でこちらへと話しかけて来た。
「Excuse me!」
うわ! やっぱり英語なんだ。
ええと、これは自己紹介だな。
リンクスキングダムのセカンドプリンセス?
この人はリンクス王国のマリオン第二王女って事らしい。
なんか確認したい?
んー? apostle?
単語がよく判らないな。
あっ、辞書貰ってたんだっけ、調べてみよう。
えーと、apostle の意味は神の使徒?
うわ、違うって言っておこう。
「My name is Kurosu」
ん? 敬称を付けた呼び方じゃないとダメ?
誰にでもyouって言っちゃう文化だし、それじゃマズイって思ってるのか。
別にミスターでも何でもいいんだけどね。
英語って人の名前を敬った表現が少ないから、目上の事には日本語の"様"を敬称付けるみたいにして、特殊な肩書を付けて呼ぶのが最上の敬称なんだって聞いた事があるな。
ドクター中松とかデューク東郷とか・・・
「Saint Kurosu」
は?
聖人クロス?
いやいや! ダメだって!
St.Kurosu ってクロスの発音はクロースだし、完全に"サンタクロース"に聞こえるじゃん!
・・・・ダメだ慣れない英語だから反論できない。
Mr.クロスにしてくれと言ってみたが、サンタクロースで押し切られてしまった。
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