極彩色の大森林⑤
「な、何ですかあれ……」
「何者かはこれから調べる。ただ、今わかってることを言えば、でかい実績になるってことだ。あの
「……挑むんですね」
それに立ち向かう姿勢を見せたコウマに、アオナは不安げな声を漏らす。
「何だ、やめとくか?」
「いえ、やります。足を引っ張らないよう全力で努めます」
しかし、アオナとて今回の案件の目標を達するためには、避けては通れない相手だと理解していた。
恐怖を押し殺して銃を握り、コウマの側でその時を待つ。
「そう気負うなって。アイツの攻撃は全部防ぐから、俺の後ろにつきながら
「はい……!」
「よし……今だ、行くぞ!」
そして、その生物が背後を向けた瞬間、コウマはアオナを引き連れて
「
それと並行して、コウマは
「――ゴオオォォ!」
その現象に伴う冷気を感じて振り向いたその生物は、
それは木々を
ただ、その頃には既に太刀が届く範囲まで接近していた。
「ゴオオォォ……」
しかし、そのまま両断とはいかず、コウマの一撃は甲高い音と共に表皮に弾かれた。
返す形で、その生物は細長い腕でコウマ達を叩き落とそうとしてきた。
その腕にアオナは銃弾を撃ち込んだものの、傷のひとつすら付かず
「
そこに、コウマが
そのまま振り抜かれた腕は、その先にあった大樹をいとも容易くへし折り、地面に向かってなぎ倒す。
「硬いなアイツ。弱点を見つけないと」
「そ、そうですね……」
コウマが再び形成した氷の足場を共に降りながらそれを目撃したアオナは、一撃でも当たれば終わると
しかし、怪力などその生物が備える能力のほんの
「ゴオオォォ!」
「鼻押さえて、息止めろ!」
「はい!」
二人は慌てて嗅覚を
「何だか、景色がぐるぐるして……前が……」
「大丈夫だ! 何もなってないから、足を止めるなよ!」
匂いによって幻惑された感覚がありもしない現実を作り出し、正常な対応を困難にさせる。
「ブルルルオッ!」
「ウキャキャ!」
それに加えて、ヒトの何倍も匂いや音を感じ取る器官が災いして、その花の香りで正気を失った周辺の生物が参戦してきた。
勢いよく突進するレインボアは、足取りがおぼつかずに何度も木の幹に
猿のような生物は妙に上機嫌な様子で、肥大化した腕を
他にも
どれもこれもまともといえる行動ではなく、だからこそ予測も難しい。
「ブルル――ッ!」
「右の方に向かって撃てるか? 適当でいい!」
「だ、大丈夫です! やれます!」
その対応に追われながらも、コウマ達は状況の打開に向けて攻勢を強めていく。
コウマは急に方向を変えて左から迫ってきたレインボアを切り伏せて、氷の矢で進路を
アオナもまだ優れないであろう意識の中で
「ゴオオオォォォ!」
そうして、乱戦から抜け出せそうな
あの
「ゴオォォ!」
「グオ……ッ!」
「ブモォッ!」
長い手足を順々に前に出し、
その道中には自らが幻惑した獣達がいたが、まるで意に介していない。
それらもろとも地面を
「もうはっきりしてるな? ちょっとの間、周りは任せたぞ」
「はい!」
「
対して、背後をアオナに任せて反転したコウマは、急速に縮まる自身とその生物の間に氷の突起を多数出現させる。
それも、ただ並べたわけではない。
不規則かつ
「ゴオオォォ……オォッ!」
その結果、その生物は
「
そこに、コウマは追撃として氷の矢を何十本も打ち込んだ。
見た目は細くとも
その矢で全身に
「ゴオオォォ!」
「……まさか」
そして、腕を交差させて背中の
「よし、ついて来いよ!」
「え? は、はい!」
それをもとに行動を起こしたコウマは、アオナを連れて前に走り出した。
当然、向かう先にはあの
「な、何を……?」
「いいから! 俺を信じて顔に向かって撃ちまくれ!」
その真意を問おうとするアオナを強引に丸め込み、コウマ達はその生物に接近していく。
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