同行の条件①
長机とそれを挟んで
「打ち合わせ通り……落ち着いて……。打ち合わせ通りに、落ち着いて……」
何度も繰り返しているその言葉とは裏腹に、彼女の
表情は
「……詳しい場所は私達だけが知ってる。目的は、それを教えることと引き換えに、あの壁の向こうの探索に同行させてもらうこと」
しかし、それがあってもなお、アオナが口にしたただひとつの要望を出すのにここまで気を張っている原因は、これから彼女が
「落ち着いて……打ち合わせ通りに」
「――失礼いたします。お待たせいたしました」
「は、はい!」
短いノックを経て、アオナが待つ部屋に一人の女性が入ってきた。
タイトなスーツが似合う長身に、感情が読み取れない硬い顔もあって、どこか近寄り難い雰囲気がある。
「
ホンダと名乗ったその女性は、アオナが参加した競売でタナカと共に
つまりは、
アオナに異様なほどの緊張感が漂っていたのは、この立場の差があるゆえだろう。
「本日は急にお呼び立てして、申し訳ございません。再調査でこのような結果が得られるのは異例で、対応に苦慮しておりまして」
「そ、そんな……
「本件については、弊局の方でも追加の調査を現在行っております。そして、それにあたって当事者である御社にも詳しくお話を聞かせていただきたいと思い、このような時間をいただく運びとなりました」
ホンダは足早に席に着くと、手にしていた資料を机に置く。
その資料の表紙には、『
競売を経て
そのルールに従って、アオナも書類の作成と提出を行った。
しかし、今回アオナ達が得た結果は、探索済みの
だからこそ、コウマの予想通り
「……早速ですが、内容についてもう少し深掘りをしても?」
「は、はい……!」
「まずこの点ですが――」
それから、まずは報告書には記載しきれなかった事象について、口頭での確認が行われた。
道中での戦闘の詳細や隠された空間を発見するまでの経緯など、ホンダの事細かな質問にアオナは誠実に答えていく。
「――それで、この資料でいう新たな場所を発見したと」
「はい、そうです」
そのやり取りを経るにつれて、アオナの顔の
事務的な受け答えが続いていることもあり、室内の空気は重く堅苦しい。
かつ話に終わりが見えてきたことで、この状況で自身の要望を提示しなければならないことを察したらしい。
「それで、ひとつお伺いしたいのですが……よろしいでしょうか?」
「……何でしょうか?」
しかし、アオナにもこの場を任された責任がある。
「弊社としては、これを大きな実績と捉えております。しかし、ただ場所の情報を提供して終わりとなるのは……どうも、惜しいなと思う面がありまして……」
「……それで?」
「はい。この場所をお教えする代わりに、ここの探索を行う場合は、その……弊社も参加できる権利をいただきたく存じます!」
ホンダが来るまでの間、自身を
それを言い終えたアオナは、興奮も相まってより赤らんだ顔でホンダの返答を待つ。
「……これは、驚きました」
「も、申し訳ございません。急なお話で……」
そのホンダから返された第一声は、驚きの感情を表すものだった。
それを場違いな要望を出したせいだと解釈したアオナは、慌てて謝罪の意を示す。
「いえ、そうではなくて……日本
「……はい?」
しかし、ホンダが驚きを抱いた理由は、アオナが思ったこととはまるで違っていた。
「このような場を設けることも
「は、はい……」
「……そのはずだったのですが、局長は御社の要望に応えるつもりのようで……今回の件に関してはこの通りになります」
ホンダ自身、納得しきれていない部分があるのだろう。
あくまで前提条件が崩れたわけではないと、ホンダは
そうしながら、ずっと手にしていた一冊のファイルをアオナの前に差し出した。
「指定企業案件……!」
その表紙を
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