新緑の岩窟②
「グルルルッ!」
「グガアッ!」
接近するコウマに気付いたケイヴルフ達は、歯を
それに構わず、素早く踏み込んだコウマは太刀を振り上げる。
自身の強度に優位性があると見たのだろう、一体のケイヴルフは放たれる斬撃を防ごうと身を丸める。
「悪いな」
「グガ……ッ!」
しかし、コウマが振り抜いた太刀は、ケイヴルフの岩肌を容易く切り裂いた。
背中から腹にかけて両断されたケイヴルフは、か細い声を残して息絶える。
その様を横目に、コウマは続けて身体を
「グルアッ!」
ただ、一介の獣とはいえ知性がないわけではない。
それも、こと戦闘に限れば、野生で
先に討たれた仲間の有り様を見て、もう一体のケイヴルフはコウマの太刀を受けるのではなく、身体を
そして、滑るように地面を走ると、一旦草花の中に身を隠す。
それにより風景に溶け込んだ今、その姿を鮮明に追うのは容易にできることではない。
「グガアアアッ」
「危な――!」
そして、難なくコウマの死角に移ったケイヴルフは、茂みから飛び出して勢いよく牙を
息を潜めてその戦況を見守っていたアオナは、慌てて危機を伝えようと口を開く。
しかし、その声が完全に発せられる前に、既にコウマの太刀はケイヴルフの首を捉えていた。
「どこから来てるかなんて、余裕でわかってるっての」
血を払って太刀を
「すごい……」
「いや、ケイヴルフなんてそんな厄介な相手じゃないだろ。硬くて速いってくらいだ」
「それが、厄介なんじゃないですか……」
探索済みであるということは、アオナが持つ地図をはじめとして内部の構造や生態系まで明らかになっていることと同義だ。
そこには、当然ケイヴルフの情報も含まれており、アオナも準備の段階でそれに目を通していたのだろう。
ケイヴルフの
「まあ、この太刀の性能もあるけどな」
「やっぱり。それって
「ああ。これは、ゴウブツ鉱石を使っててな。太刀筋がちゃんとしてれば、ほぼ何でも切れる。その分、かなり重いけどな」
しかし、コウマが持つ太刀が
コウマの太刀の場合は、素材として使用されたゴウブツ鉱石のおかげで抜群の切れ味を誇っている。
「……昨日のそれもですよね?」
「そう。
「その、それって……」
「お察しの通り、ギンジさんの武器を真似して作ったやつだよ。……嫌か?」
「いえ、そんな。懐かしく感じただけです」
そして、当然ながら昨日襲ってきた男達を
簡単な説明と共に、コウマは腰に差したそれに軽く触れる。
「そうか。……あとは、この
「……たくさん持っててすごいです。安いものじゃないのに」
「
「………………いいです」
「随分と間があったな」
「な、ないですよ! ちょっと、その、言葉が出なかっただけです」
「なんだそりゃ」
話の流れでやましい気持ちを
「そんなに笑わないでくださいよ……」
「悪い悪い。まあ、会社を立て直すついでだ。アンタの飯くらい好きにできるようにしてやるよ」
そうして、二人は再び
地図を参考にして土の道を
それを繰り返しながら進むに従って、自然はより色濃くなり、生物の気配も多く感じられるようになってきた。
「ここからが本番って感じだな」
「そうですね……」
「俺が先行するから、援護は頼んだ。周りの敵に気付かれるとか考えずに銃を使えよ」
十分な広さがあるとはいえ、
それは、威力はあるものの音の問題が付き
コウマはそれを廃して、存分に銃を使って適切な対処するようにアオナに伝える。
「わ、わかりました……」
それは同時に、これから
戦いの経験がないわけではないのだろうが、久々の案件というコガネイの台詞やコウマに対する反応から、十分な場数を踏んでいるようには感じられない。
それもあってか、アオナは差し迫る敵地に一層表情を引き締める。
そして、自身の銃を両手でしっかりと握り締めると、コウマと共に周囲を警戒しながら歩みを進めていく。
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