新緑の岩窟①
多くのビルが地面に横たわり、その
道路の
その
しかし、その車両の年季を示すようにマフラーが吐き出す排気ガスは真っ黒で、エンジンの
「気持ち悪い……」
「すいません、かなり古い車で……また停まりますか?」
「いい。これ以上、時間がなくなるのは惜しい。急いでくれ」
「わ、わかりました」
その運転席でハンドルを握るアオナは、助手席で乗り物酔いに苦しむコウマに
散乱する
そのどうにもならない状況にただ耐えることを決めたコウマは、目を
「……あ、見えてきましたよ!」
「やっとか……」
それからしばらく無言の時間が続いたが、前方に巨大な岩山が見え始めたところで、アオナが声を上げる。
いくら
それが不自然に途切れて出来た空間に悠々と
そして、新緑が生い茂るその
「着きました。ここが、
これこそが、今の世界が
停車した車の中で、二人はその穴に目を
「警備はいないのか……まあ、探索済みの
「ここにあります。契約時に貰いました」
富に
それを可能な限り防ぐために、
しかし、
それでも、取得が義務付けられている
「忘れ物はないな?」
「えっと……これと、これがあって……。はい、大丈夫です!」
静寂に沈む
昨日出会った時の服装とは打って変わって、互いに
コウマは紅色の
他にも、様々な道具を入れた
アオナはコウマよりも幾分か軽装ではあるが、布製の
「よし、行くか」
「は、はい!」
それらを確認し終えたコウマ達は、早速
その瞬間、周囲の環境は一変した。
「気温はちょうどいいんだけどな。湿気でちょっと蒸し暑いな」
「そうですね」
現世と
「諸々採取しながら奥まで行こう。地図は?」
「はい、ちゃんと借りてきました。ここにあります」
そして、いくつにも分かれて複雑に入り組んでいる通路も、地図がある彼等には関係ない。
黒い土を踏み締めながら生い茂る草花を
その道中、それぞれめぼしいものがあれば採集を行って、自身の持つ収納に仕舞っている。
「……止まれ。敵だ」
そうして順調に進んでいた矢先、コウマは敵の存在を察知してアオナを制止する。
「別の道から
「……いいや、かなり遠回りになっちまう。ちゃちゃっと倒して進もう」
地図をもとにアオナは戦いを避ける提案をしたが、コウマはそれを却下する。
消耗する体力と時間的なメリットとを
そして、敵と
「グルルル……!」
「グルウッ!」
それから少し進んだ先にいたのは、二体の獣だった。
四足で
鼻の下にある口には、鋭利な歯が並んでいる。
その全体の形態は、狼に
しかし、本来であれば毛皮があるところが、緑色の
「ケイヴルフか……」
「えっと、どうしますか?」
「俺だけで十分だ。弾薬もタダじゃねえし、ここにいろ」
その獣――ケイヴルフの姿を草葉の合間から捉えたコウマは、アオナを待機させると一気に駆け出した。
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