プロローグNo.2③ 『想いと離別』
もうちょっとエピローグ続きます(-ω-;)
------------------------------ここから----------------------------------------------
各々がスマートフォンを取り出し、画面に映し出される文面を読み上げる。
『政府からの発表
2027/01/09 10:38
「巨大不明物体情報。巨大不明物体情報。
先ほど東京都渋谷区代々木(明治神宮)
付近にて巨大不明生物が発生した模様
です。安全のため当該地区にお越しの
方々は頑丈な建物又は地下施設に避難し
テレビ、ラジオを付けて下さい。」
(総務○消防○) 』
「明治神宮ってここから2キロも離れてないじゃないか」
文面を読み終わった誰かが呟く。
スピーカーから耳を不快にさせるようなサイレンが流れ始める。
『政府からの発表です。
2027年1月9日 10:38発表
巨大不明生物情報です。巨大不明生物情報です。
先ほど東京都渋谷区 明治神宮周辺に巨大不明生物
の出現が確認されました。当該地区にお越しの
方々は速やかに頑丈な建物、又は地下施設に避難し
テレビ、ラジオを付けて下さい。繰り返します。
政府からの発表です… 』
スマートフォンからの情報だけでは現実を受け止めきれなかった周囲の人々がスピーカーより聞こえるAI口調の音声により次第に事態を理解し始める。
それと同時に係員が進もうとしていた非常階段へと我先にと走り出す者が出る。その動きは直ぐに広まりまた一人また一人と同じ方向に駆け出す。
「走ると危険です!走らずに非常階段へと向かってください!!走ると危険です!!」
我に返った係員は何とか落ち着かせようと声を張り上げるが、走り出した人々の耳には全く入っていない。
涼と梨沙は壁際によって歩き始めていたため周りの人々の急激な行動に巻き込まれる事無く状況を冷静に見る事が出来ていた。
「とにかく俺たちは落ち着こう。明治神宮付近に出たってことは確かにこの近くに奴らが居るんだと思うが、慌てて外に出た方が危ないと思うから警報にもあるようにまずは大江戸線のホームに降りよう」
「でもみんな非常階段で外に出ようとしてるよ?」
不安そうに腕に捕まってくる梨沙
「大丈夫、個々の地下鉄は地下7階に有るんだ、ちょっとやそっとの事じゃびくともしないよ」
そう努めて明るく言う涼。内心では昨年末ニューヨークで起きたやつらによる破壊活動の映像が頭によぎる。
新宿駅の改札を乗り越えて地下鉄へと降りるエレベーター前までやってくるが当然のように非常時であるため動いていない、エスカレーターも同様のようだ。
「仕方ない、エスカレーターを歩いて降りるしかないか。ここから下に降りるぞ」
「了解、ここを降りた所で少し休憩しても良い?」
ここまで少し急いで歩いてきたため疲労が溜まってきたのか左足を摩る。
「確か下の改札前に休憩できる場所があったと思うからそこで暫く様子を見ようか」
少し左足を引きずるようにして歩く梨沙に肩を貸すようにしてエスカレーターを下る。
「涼ちゃん…ごめんね、あたしが渋谷に行きたいって言ったばっかりにこんな事に巻き込んじゃって…」
顔を伏せて弱弱しく謝罪の言葉を紡ぐ梨沙。
「何言ってんだよ、アラートは明治神宮から半径7キロに出されてるから秋葉原に行ってても同じだったさ」
優しく言葉を掛けて頭を撫でてやる涼
「うん。優しくしてくれてありがと…」
エスカレーターを下り終わると改札口側へと進む。これまで幾人かとすれ違いはしたがほとんどが上階を目指して走る者ばかりだった。
改札口横に設けられている事務室を覗くが誰も居ない様子で、声を掛けても返事がない。
「誰も居ないね…どうする?」
「仕方ない、緊急事態で仕方ないから暫くここにとどまって様子をみて判断しよう」
事務室に入ってすぐの所にあった椅子に梨沙を座らせる。
「少し休んだらましになると思うから。」
梨沙は左足と義足の取付部分を軽くマッサージするようにもみほぐしている。
「辺りに誰かいないか見てくる。梨沙はここで待っててくれ」
「早く戻ってきてね…?」
先ほどから続く予想しない異変に梨沙も心が折れかかっているようだ。
「大丈夫お前から見えなくなる所までは行かないから安心しろ」
涼は無理やり笑顔を作って梨沙の頭をもう一度優しくなでると事務所から出ていく。
といっても事務所の窓から見えなくなる所に足を踏み入れないように辺りを確認していく。
「おぉ~い!誰か残ってるやつは居るか!?」
ある程度地下空間を見渡せる場所に立って声を張り上げるが何の反のも無く地下鉄から吹き上げてくる風の音が少し聞こえるくらいである。
「おぉ~い!!」
もう一度声を張り上げるが反応は変わらずである。
「やっぱりみんな外に逃げたのか?」
ちらりと事務所の方に視線を向けると、不安そうにこちらを見ている梨沙が見える。
周りに人が居ない事と特に危険を及ぼす物が無い事を確認して事務所の方へと向かう。
もう少しで事務所の入り口というところで梨沙が窓から乗り出して何やら叫ぶ
「涼ちゃん!!後ろ!!変な格好の人が!!」
先ほど声を出して確認し目視で誰も居ない事を確認したはずなのに、頭に疑問符を浮かべて振り返る。
そこには変な布切れをすっぽり被った人物が立っていた。
「あなたも逃げ遅れたんですか?」
その人物の格好に不信感を覚えながらも確認のために声をかける。
ちらりと事務所の方を確認すると梨沙が近寄ってこようとしていた。
それを手の合図でそこで待つように指示する。
「大丈夫ですか?」
何も返答をしないままよろよろとこちらに歩いてくる人物に再度声をかけるがこれにも答えずこちらへと近づいてくる。
距離にして2メートル程度の所まで来るとその人物は倒れこむように涼の前に膝をつく。
その拍子に頭からかぶっていた布切れがめくれ顔があらわになりこちらを見上げてくる。
その顔は人間である。しかも小顔に目鼻立ちがクッキリとし一見海外モデルかと見間違うほどの美貌である。しかし、我々地球に住む人間と明らかに違う部分が有る。額に第3の目が存在し2つの目と同時に涼を見上げていた。
「Vela zara ika!!!(やっと見つけた!!!)」
見上げた瞳に涙を浮かべて手を差し伸べてくる。
「え?なんて言ったの?」
咄嗟にかけられた言葉を理解する事が出来ず涼は差し出された手を反射的に掴む。
「Ika tara lira!!(あなたを探していました!)」
再び聞きなれない言語で話しかけられてさらに頭が混乱する涼。
慌てだした涼の姿を見て梨沙も近づいてくる。
「あなた何?涼に何か話したいの?」
今度は梨沙が目の前の人物に話しかける。
「Alarden rogas seo nis ulinos io hurumerra!!(あなたたちの世界を救うためにもわたしと一緒に来てください!)」
再び謎の言語で興奮気味に話しかけてくる。
「Vakure esuto iseria!(直ぐに転移します!)」
そう言い放つと掴んだ手をそのままに勢いよく立ち上がり良く分からない念仏のような言語をぶつぶつと唱え始める。
暫くすると3人の足元が光始めたと思ったら目を開けているのも難しいくらいの眩しさが3人を襲う。
「涼ちゃん!!なにこれ!!何が始まるの?」
眩しく目をつむった状態で梨沙は涼の姿を探す様に両手をさまよわせる。
「俺も何が何だかわからんがなんだか嫌な予感がする!!梨沙ここから離れるぞ!!」
伸びてきた梨沙の腕を右手でつかむと走り出そうとするが、いまだ掴まれた左手がそれを許さない。
「くそっ!!この手を離せ!!」
どうにか振りほどこうと全力で腕を動かすが全く動じない。動じないどころか掴まれた手が痛いぐらいに握り返される。
「Flaren、sario yuur runovan mo alarden seraano!(ごめんなさい あなただけは私たちの世界に連れ帰ります!)」
こちらを見返す三眼が強い意志を込めてこちらを見てくる。
いっそう足元の光が強くなる。
このままでは二人とも何かしらの面倒毎に巻き込まれると感じた涼は右手に掴んだ梨沙の腕を一度強く引き寄せると近づいた梨沙の耳元でささやく。
「ごめん、梨沙。」
「え?」
それだけ呟くと今度は逆に梨沙の体を突き飛ばす様に光の外へと押し飛ばす。
梨沙が光の外へと倒れこむように押し出されるのを確認すると同時に涼の意識は光の中へと吸い込まれるように薄れていった。涼が最後にみた梨沙の顔は呆然とこちらを見つめる顔だった。
2027年 1月9日 日本に初めて現れた『それら』は全部で12体、ニューヨークに出現した時と同様に円形に等間隔に並んだそれは大火力の攻撃力を有さない自衛隊ではなく在日アメリカ軍及び国連軍により排除作戦が実行された。のちに一般に公表されたのは気化爆弾の大量投入による巨大不明物体の殲滅であったが、実際に使用された爆弾は放射能物質の生成が極めて少ない水素爆弾が使用された。爆弾の効果は投下直下に居た『それら』は爆弾が発する高熱により蒸発、投下場所には深さ100メートル、直径400メートルのクレータが出来上がり、爆心地から3キロほどの範囲では熱線により人も物も焼けて影へと変わった。それより遠いも衝撃はや爆風により瓦礫となり東は皇居を超え東京駅まで迫り、西は環状8号線の辺りまで衝撃が到達した。『それら』が現れた際に国民保護アラートにより避難指示が出されたとはいえ全く人的被害を抑える事が出来たわけでは無かった。物的被害は直ぐには復旧が難しいほどのダメージを受け、人的被害に関しては死傷者約10万人、負傷者を合わせると30万人にのぼった。辛くも『それら』が動き出す前に殲滅する事が出来たが、作戦要綱を全体から見た際に物的・人的被害の膨大さに疑問を残す作戦だった。
国政を司る国会議事堂及び防衛相も水爆の影響範囲内であったため政府機能は立川災害対策本部予備施設へと移行していたが、多数の国会議員に欠員が出たため内政は大混乱に陥っており、臨時政府の確立により何とか国としての体を保っている状態である。そんな中、自衛隊、警察庁、消防庁の連携により爆心地付近の救助・復旧作業が開始されたのは2日後の事で、3日目までに救助され存命だった人間は全体の0.01パーセントに満たない25人であった。その中に『御神楽 梨沙』の名前のみが存在し『秀嶋 涼』の名前は存在しなかった。
------------------------------------ここまで-----------------------------------------------
この小説に出てくる人名、組織名は全てフィクションです。
同名の人物、組織が有っても全て関係の無いものですのであしからず。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます