プロローグNo.2② 「変化と想い」

まだエピローグ続きます(-ω-;)


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●2027年1月8日 東京都日比谷公園周辺

「少し遅刻しちゃったけど話はしっかりまとまって良かったねぇ~」

今まで話をしていた企業のビルから出ると梨沙は背伸びしてこった体をほぐすように体をゆするとサイドにまとめた髪の毛がピコピコと揺れる。

「梨沙のおかげで丸く収まったよ。ありがとう」

色々と苦労を掛けている意識がある涼は梨沙に頭を下げる。

「涼は専門用語を使わないで説明するのが下手だからね~、私がかみ砕いて説明しないと相手に伝わらないから仕方ないよ」

「でも介護ロボットの細かな説明は扱う上で必要な事だろ?」

「耐荷重やアームの可動範囲なんかの話は必要だから良いとして、人工知能やニューラルネットワークの話ってロボットを扱うエンドユーザーに覚えこませる必要ある?」

「あ…いや、その部分に関しては脳波コントロール機能の説明に熱が入ってしまって…」

軽く睨んでくる梨沙から顔をそむける。

「それに、エンドユーザーは看護師や介護士さんなんだからもうちょっと誰にでもわかる言葉で説明しないと理解が追い付かなくて誤った使い方でロボットを使われることになるんだよ?それで事故とかに繋がったら私たちの会社にも責任が発生するんだよ」

「分かっちゃいるんだけどな~…かみ砕いて説明しようとしてるんだけど気づいたら一方的に喋ってるって感じだし、説明に力が入ってくるとどうしても視野が狭くなって気づいたら一人で喋ってたって感じになっちゃうんだよな…」

ナゾだとばかりに頭をひねる。

「昔からそうだよね~、好きな事、気になる事には周りが見えなくなる所、あたしは慣れてるから良いけど、もう大人の仲間入りしてるんだから治せとは言わないけど少し落ち着いた方が良いよ?起業してもうすぐ1年になるけど涼が一番製品に思い入れがあるんだから、それをしっかりクライアントに伝える事が出来たらもっと考えに賛同してくれる人は出てくると思うよ。」

先を歩きながら諭すように話していた梨沙が振り向く。

「人の手助けをするロボットを作る…言葉だけだと凄く幼稚な感じに聞こえるけど、涼ちゃんのその想いでわたしは救われたし今もこうして普通に歩き回れてる…」

梨沙は自分の左足を摩りながら言う。

「最初に作ったのは配慮が足りない、思った通りに動かない不完全な義足だったけどな」

「それでも、あの頃のあたしに立ち直るきっかけをくれる物でもあったんだよ。これをくれた後も一緒にあれこれ悩んで、考えて、手直しして…、今では外から見る分には普通の人と同じように歩けてる」

梨沙は涼の顔に視線を向ける

「あたしの人生何も無ければあの時点でダメになってたと思う。だから変わるきっかけをくれた涼ちゃんにはホントに感謝してる。」

一歩踏み込んで涼の大きな体を包むように抱き着き硬い胸板におでこを当てる

涼は抱き着いてきた梨沙の体を抱きしめる

「大好きだよ…涼ちゃん」

「俺も大好きだ。荒崎氏じゃないけど名実ともにパートナーになるんだこれからも俺の隣に居てくれるか?」

「もちろんだよ!涼ちゃんが嫌だって言ってもずっとそばにいるからね!」

「そんなこと言わないから安心しろって」

暫く一つだった二人の影は寄り添うように変わり、繁華街の色鮮やかなネオンの中に消えた。

人が営む喧噪は二人の姿を飲み込み、夜が更けても変わらず灯りを灯し続ける。



●2027年1月9日 新宿駅

翌日、涼と梨沙の二人は新宿へと買い物に来ていた。

涼は秋葉原へ行きたがっていたがどうしても雑貨が見たいという梨沙の願いで新宿へと足を向ける事になった。

「ありがとね涼ちゃん。再来週には引っ越しだから今のうちに必要になりそうな物を見ときたかっただぁ、今日は二人で使うのを中心に見て行こう~」

駅の改札を抜けると涼の手を取って複合商業施設へと進む。

「今使ってるのじゃダメなのか?わざわざ新しく買わなくてもまだ使えるのがほとんどだし、対して必要ないような気もするけど」

手を引かれながら涼が意見する。

「もちろん、まだ使えるもので買い替える必要のない物はそのまま持っていくけど、例えばベットとかテーブルなんかは一人用の物だから新調したいじゃん。特に涼ちゃんの布団なんてあんまり干してないからぺちゃんこじゃん!あれにくるまって寝るの嫌だよあたし…」

「失礼な!2ヶ月に一回はちゃんと干してるから!!」

反論する涼の顔を信じられないものを見るように見上げる。

「寝具は一式新しくするの決定だね。とにかく!色々と見たいから早く行こう!」

涼の腕に自分の腕を絡めてお店へと先導する。腕を引かれるままに先を進む涼。

「分かった!分かったからそんなに急かさなくてもいいって!」

新宿駅に接続している商業施設には歩いて数分、直ぐに到着する距離である。

駅から外に出る事無く店舗へと入れる構造のため外の風景を見る事はほとんどない。

話しながら移動を続ける涼と梨沙二人に「ドシン!!」と大きな衝撃を受ける。

転びそうになる梨沙の腕を咄嗟にひいて抱き寄せる涼。

「一体何?すごい揺れたけど。地震?」

不安そうに見上げてくる梨沙をおちつかせる。

「地震ならもっと連続的に揺れが続いてるよ。多分この建物にバスか何かが突っ込んだんじゃないか?」

周囲に居る人々も何が起きたのか分かっていないようで周囲を見渡す様にうかがっている。

二人も動かずにとどまっていると館内のスピーカーより声が聞こえてくる。

「先ほどの振動に関しましてこれより確認作業を行います。お客様に置かれましては安全確保のため行ったん館外へと退館していただきますようお願い申し上げます。係員の誘導に従って頂き速やかな退館をお願いいたします。繰り返します。先ほどの振動に関しまして…」

放送が繰り返される中に係員らしき人が二人が居るフロアにもやってくる。

「先ほどの振動によりエレベーター及びエスカレーターが緊急停止しております。大変申し訳ございませんが、1階まで非常階段を利用して頂く事となります。これより非常階段へと誘導いたしますので私に付いてきてください!!」

「ちょっと!!いったい何があったの?急に退館なんて詳しい説明は無いの?!」

現状が解らない人々が係員へと質問を投げかける。

「大変申し訳ございません。私共も現状の確認を行っている状況でして、詳細をお応えする事は出来ません。とにかく誘導に従って館外へと出てください!」

係員も誘導のために来ているため何が起こったのか詳しい事を説明する事が出来ない。

「何があったんだろうね?涼ちゃん」

不安そうに見上げてくる。

「あぁ、とにかくあの人の言うとおりにここを出ようか。外に出たら何かしら説明があるかもしれないし。」

梨沙はうなずくとさっきと同じように腕を絡めてくるが、先ほどとは違い涼の体に寄り添うようにぴったりとくっついて歩き出す。

「非常階段で降りるからちょっと大変だけど左足痛くなったら直ぐに言うんだぞ」

最新のメカトロ技術と涼の特別Oneオフ仕様の義足でも左足切断部分と義足を接続する部分にはそれなりの負荷がかかり左足の生身の部分に多少なりとも疲労が蓄積し痛みなどが出る事が有るためそういった場合には義足を外して暫く休む事がある。しかし今は避難の途中であるためなるべく速やかに1階まで移動する必要があり、若干の疲労感が在るもまだ歩く事ができそうだと梨沙は考えそのまま非常階段を利用して移動する事とした。

「分かってるよ。もし痛くなったら直ぐに言うから。頼りにしてます!旦那様!」

涼に笑顔を向けて冗談ぽく答える。

「こんな時に茶化すなよ。とにかく移動するから疲れたら言う事。」

「はぁ~い」

他人とぶつかると危ないと思い壁際により周りが進む方向に自分たちも足を進めようとしたときに突然周りが騒々しくなった。

無数のアラート音、それは涼と梨沙の懐からも発せられている。

音の発信源はそれぞれのスマートフォンであった。


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この小説に出てくる人名、組織名は全てフィクションです。

同名の人物、組織が有っても全て関係の無いものですのであしからず。

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