プロローグNo.1④ 『壊滅から新世界』

「それら」はその後世界各地の巨大都市に現れては自爆攻撃を行い、ニューヨークの悲劇から1ヶ月、ロンドン、上海、パリ、東京等次々に「それ」は現れその都度、1都市とそこに暮らす人々を文字通り消滅していった。攻撃を受ける都市はその国の首都もしくは700万人以上の人間が生活している場所が狙われていたため、各国首脳部は数百万人規模都市からの強制的な分散疎開を実施する事となり、大都市への一極集中になっていた国々では経済に混乱をきたすところもあった。年が明けて1月末には世界総人口の10%にあたる8億人超の人々が亡くなり、前触れもなく突然現れ数時間で自爆する「それら」に危機感が積もる中それは起きた、アメリカの自国内で2度目の「それ」の出現に焦った首脳部が戦略核兵器による攻撃を実行、着弾と同時に凄まじい熱量と衝撃が「それら」を襲い爆炎とキノコ雲の中にその姿が消え去る。やがて煙がはれた場所には「それ」だった物らしき焼け焦げて崩れた物体と爆風によって放射状に広がる建物の瓦礫などが現れる。核汚染物質の滞留という払った代償はあまりに大きいが、いまだ正体不明の「それ」に対して人類の兵器で対応する事が出来るという事が折れかけた人々の心に希望をともす。今回の攻撃により破損しつつも形を残したまま「それ」の一部分を軍が回収、一連の出来事で初の敵に関する情報を収集できる成果を得ることが出来た。この出来事をきっかけに国連は「極大火力の一点集中による同時攻撃」を認可。この中には核兵器、生物兵器などの利用も認められているが人道的配慮から人間が生存している地域での利用は不許可となり限定的とされており、サーモバリック爆弾などの気体爆弾をメインとした攻撃方法での殲滅を行う事となった。これにより、各国で破壊された「それ」の研究が進み次第に戦術による戦闘方法の策定と、「それ」の外皮構造や内部構造の把握により、対抗手段・決戦用兵器の開発が進められることとなた。それまで奪われるだけだった地球人類が小さなきっかけから反撃の糸口を掴み取ることが出来たが、いぜん出現が続いている「それ」に対する攻撃に国内の都市が攻撃事に消滅する事と戦費の確保、国内情勢の不安定化による治安悪化の対応、攻撃による死者数の増加により各国の国力は徐々に衰退している。全世界の総人口は79億人から大きく減じ39億人と半年で半数まで数を減らしてしまっている。これを受け、各国は国連に不明物体への調査・対応期間を設置、「それ」に対する出来事を全て集約する事によってそれまでに各国が調査研究していた情報を統合し、「それ」に対応しうる決戦兵器の開発・早期完成を目指す事とした。また、国連での調査を開始すると共に各国それぞれで呼び名が異なっていた「それ」の名称を統合する事とし、全世界に対して新体制内容を含めて布告した。


『人類存続のための国連新体制の布告』

1.国連本部は先のニューヨーク攻撃に際し被害を受けたため、被害を受けていないハワイ州へとその機能を移転する。


2.各国にて保存・管理されている対象の物体を4拠点に分けて研究を行う。なおこの4拠点で知りえた内容は秘匿し情報の開示は各国首脳のみとする。


3.各国連軍拠点に対して各国より中隊規模編成の人員の派遣を要請する。拠点設置国に関しては大隊から連隊規模の配置を希望する。


4.現在各地域にて破壊活動を行っている物体を敵対的既知外非生物(hostile alien abiotic)HAAと呼称しそれらに対応する機関を敵性非生物対策本部(Hostile Abiotic Countermeasures Headquarters)HACHと名称を改める。


5.人員不足であるため各国より生き残っている40代から10代後半の不自由ない体の男女を徴兵する事とする。


大幅に数を減らし奪われるだけだった人類がこの日より反撃を開始する。

ある者は正義感や義務感から、ある者は大切な人を守るため、ある者は復讐のため様々な感情が入り乱れて世界の様相は大きく流転する。


------------------------------------ここまで-----------------------------------------------

この小説に出てくる人名、組織名は全てフィクションです。

同名の人物、組織が有っても全て関係の無いものですのであしからず。

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