プロローグNo.1③ 『反撃と壊滅』

放たれた無数のミサイルと砲弾は光の尾を引きながら『それら』へと一直線に向かって行き、数瞬のうちに着弾する。



(ドドドドドドドドドッ!!!!!!)



全てが『それ』に着弾し腹に響くような凄まじい衝撃音と爆炎が巻き起こる。


地上部隊は立て続けに攻撃を行い戦闘機からは一射目に続いて二射目を発射後、標的への攻撃効果確認へと移る。


繰り返し聞こえていた衝撃音が闇、眼前には爆煙が立ち込め地上からは『それら』の様子がうかがえない。


『ブラックベア01より現地司令部へ、爆煙により標的が確認できない。一度、パスして旋回後確認する』


煙により『それら』を目視確認できないため、全機、上空を通り過ぎ旋回しようとすると煙の中から突然凄まじい速度で何かが伸びる。


それまで空を飛んでいた全てのF-35はその何かに接触し、串刺しあるいは真っ二つに引き裂かれ爆発する。


熱反応もレーダー照射も無い何かの攻撃に自分が攻撃されたことも気づかないまま戦闘機のパイロットたちは意識を刈り取られる。


地上からは『それら』の直上、夜空に四十の輝きがほぼ同時に花咲くところが見えた。


「…」


目の前で起きている出来事を理解できないまま上空を見上げたままの陸軍隊員。


「ブラックベア01!、状況を報告してください!ブラックベア01!」


上空の光が地上へと降下し始めた頃、オペレーターが先ほどまで更新していた戦闘機のパイロットへ交信を試みるが返ってくるのはノイズのみである。コールサインを変えて隊全体に呼びかけるも応答はない。


「ブラックベア隊、全機応答有りません…」


オペレーターの呟くような声でも聞き取れるほどにあたりは静まり返っていた。


「目標の損傷具合を確認できる小隊はないか?」


炎上してバラバラとなった戦闘機の残骸が地上へと降り注ぐ様を睨みながら司令官が誰ともなく確認する


「…」


衝撃的な現実を前に直ぐに対応できる者はいない。


「呆けている場合か!だれか奴らの現状を確認できる奴はおらんのかと聞いている!!」


司令官の叫びにも聞こえる声で我に返った者が動き出そうとすると、再び爆発音が聞こえる。

まさかと、再び上空を見上げるが上空には爆発を起こすような物は何一つとして確認できない。

変りに今度は『それら』の前面に展開している各小隊の場所から黒煙が立ち昇っている。

再びオペレーターが報告を行う。


「救援要請です!!混乱していて詳細が不明ですがどの小隊も甚大な被害が出ているようです!!」


地図の上で頭を抱える司令官。


「各小隊…全部隊に被害が出ているのか…、一体どうやったら短時間でここまでの被害を出せるっ!!」


「指令!目標付近の煙がはれてきています!!」


近くにいたものの声に『それら』に顔を向ける。

そこには攻撃前と何ら変わらない、否、若干の形状変化がみられる。

基本の形状は変わらないが、物体の至る所から棘状の突起が上空と地上に向かって伸びている。

地上に伸びている棘が向かう先は各小隊が配置されている場所で、何かが炎上している場所に向かっている。


「被害報告です!各小隊に配備されていたM1並びに高機動車、兵員輸送車等、戦闘力を有する車両全機大破!隊員にも負傷者、死者が多数出ている模様です!


「了解した。直ちに司令本部に支援の要請を出せ。各小隊は負傷者の救助を優先しその場に待機」


被害状況に再び頭を抱えたくなる。


「司令官!目標に再び動きがみられます!!」


「この期に及んでまだ何かしようと言うのか…勘弁してくれ…」


『それ』を仰ぐ

『それ』は伸ばした棘はそのままに、再び手のような部分を上空に持ち上げ始めた。

今度は1体だけではなく20体全ての『それ』が同じように真上に向かって持ち上げ始め、頂点に達すると円形に並び立ったちょうど中点部分に非常に明るい丸い物が現れ次第に膨れ上がってゆく。


「まさか…何バカな事やろうとしてんだ…」


その光景にとてつもなく嫌な予感が司令官を襲う。

次第に膨れ上がった光体は、直径は約3kmほどになり、『それ』からアッパー湾を隔て5㎞離れている指令部から見てもとても眩しく、巨大に見え、かつこの距離でも熱いと感じる熱が伝わってくる。

やがて、『それら』の直ぐ目の前まで膨張した光体は成長を止める。

依然として肌を刺すような熱量と瞼を閉じても明るく感じる光体は次の瞬間、急激に収縮し始める。


「司令官命令だ!!展開中の小隊はt(ドガガガガガ!!!!!)」


その光景に悪寒を感じた司令官はオペレータから通信機をもぎ取りマイクに向かって退避の命令を出そうと叫ぶが、続きを喋ることが出来なくなる。

急激に萎んだ光体は数瞬後、暴力的な光と熱量、衝撃波を解き放ち『それら』ごと周囲に存在していた物体を蒸発させその衝撃は瞬く間に円形状に広がり司令本部を飲み込み市街地を縦横無尽に駆け抜けた後にはそれまで世界でも有数の人口密度を誇っていた都市の風景は無く、爆心地には巨大なクレーターが出来上がり、周囲には高熱で溶け跡形もわからなくなった物体やビルが崩れた瓦礫などが散乱している。中心部では赤くドロドロに溶けた岩、土、岩盤などから熱気が充満し地獄絵図の様相を呈している。後には動くものは無く、かつて多くの人々が人生を謳歌した都市は地球上より一瞬で消滅した。死者・行方不明者は400万人を超え、負傷者数を合わせると900万人を超える人員的な被害を被った。


------------------------------------ここまで-----------------------------------------------

この小説に出てくる人名、組織名は全てフィクションです。

同名の人物、組織が有っても全て関係の無いものですのであしからず。

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