プロローグNo.1② 『動揺と反撃』

■同日21:00 米空軍航空基地


大統領の命令が空軍司令部より伝達され基地内では作業員が慌ただしく動き回る。


格納庫出入口付近ではパイロットたちが難しい顔でブリーフィングを行い情報を共有する。


「目標はニューヨーク市街地に現れたこの巨大物体だ」


プロジェクターで偵察機が接敵した際の写真がスクリーンに映し出される。


「巨大物体の詳細は大きさ以外は不明である。」


スクリーンが『それ』を見上げた状態の写真に切り替わる。


「これの全長は約30mで人間と同じような姿をしているが腕には手が無く、顔に値する部分には目、口などに相当するものは無く、全くもって意味不明な物体だ。これが生物なのかも判明しておらん。」


スクリーンに映し出される写真が動画に変わり州兵が『それ』に大きな拡声器を向けて何やら話しかけている映像が映し出された。


「現地に到着した州軍が拡声器や光などあらゆる手段により意思の疎通を行おうとしたがそれらには全く反応を示していない。さらに…」


再び動画が切り替わり巨大物体が大きな火の玉を放り投げ市街地に落下する映像が表示される。


「こいつは大きな火の玉のようなものをセントラルパーク付近に投擲、今現在の落下場所には約1kmのクレータが出来、周辺地区は瓦礫の山とている…」


爆発を起こして巨大なキノコ雲と衝撃はにより画像が乱れたところで映像が切れる。

スクリーンの前に立った司令官がパイロットに向き直る


「大統領はこれ以上被害が拡大する前にこいつらをどうにかする事をご所望だ!標的は20体、巨大で数が多く火の玉以外の攻撃方法等やつらの詳細が一切不明で有るためハードポイントにはSAM及びAGMを装備する!」


「すでに被害に合った者たちの無念と痛みをこいつらに思い知らせてやれ!」


「Sir,yes sir!!」


司令官が目の前のパイロットに激を飛ばすと全員敬礼し慌ただしく自機へと向かって走り出す。


駐機中の機体へ乗り込んだパイロットは発進シークエンスをこなしエンジンをふかしながら誘導路を進み、管制官の許可が出るとすぐにエンジン出力を上げて滑走路から次々とF-35Aが飛び立ってゆく。


「あんな意味不明な物体…一体ニューヨークで何が起きているんだ…」


すでに豆粒ほどの大きさに見えるF-35を見上げながら司令官が胸中に湧きあがる疑問をこぼす。


夜のとばりは一層濃くなり、漆黒の夜空に昔から変わらない月が浮かんでいる。

その月を見上げ司令官はいつもと変わらない夜の風景にいつもとは違う風が吹き抜けたように感じた。

■21:40 ニューヨーク


火の玉攻撃の後『それら』は再び直立状態でその場にとどまり続けている。

上空にはテレビ局のヘリが『それら』の映像を記録するべく飛び回り、地上では陸軍が警戒のため集結していた。


「指令!各部隊の展開完了しました!」


「了解した。現状の報告を頼む」


現場司令官は急造のテントに司令本部が設置されテーブルに広げられたニューヨーク市街地の地図に視線を落とす。


「現在、部隊は各巨大物体から5ブロックの場所に1小隊及び機甲師団より1小隊につき2両のM1を随伴させております」


配備状況が地図に示しながら説明されてゆく


「市街地に残っていた民間人に関しては避難誘導を現在も遂行中となっていますが、巨大生物近辺での活動は困難となっており行方不明者や救助者への対応は今のところ進めることが出来ません。」


避難が完了したブロックには丸印が書き込まれていく。


「早急に民間人への対応を行いたいところだが現在の兵員数では致し方なしか…あのデカ物に関しては何かないか?」


「巨大物体につきましては先刻巨大な火の玉を放ったのちは再び静止状態となり現在に至るまで拡声器、光信号など考えうる限りの意思伝達手段にてコンタクトを試みるも全てにおいて反応を示しておりません。」



「あれが現れて2時間も経っていないからな、尚且つあんな得体のしれないSFチックなもの上もどう対応するべきか判断に困っているのだろう…」


「しかし、あれは我が国、国民に対してすでに敵対的な行動をとっています。遅かれ早かれ攻撃命令が下されるものと思います。」


「参謀司令より下命です!」


通信を受け取ったオペレーターが振り向き地図に向き合って話し合う上官たちに知らせる。


「内容は?」


続きを促されてオペレーターは地図の置かれる机の近くに小走りで走り寄り下命の内容を話す。


「『現時刻ををもって巨大物体の排除行動を開始する。現地に展開中の部隊はまもなく到着予定のF-35と連携し巨大物体の排除を行え』であります」


下命を聴いた現場指令官は小さくうなずいた。


「承知したと伝えろ」


「はっ!!」


参謀本部へと変身するためオペレーターは席に戻る。


「聞いての通り、空軍の戦闘機はすでに基地を飛び立っていると連絡を受けている、現着は約10分後の予定だ。我々は空軍の攻撃とタイミングを合わせて巨大物体の下部を重点的に攻撃する。M1には徹甲弾を装備、各小隊の兵員には持てるだけのジャベリンを持たせて一斉に攻撃を開始する。時間が無いぞ!直ぐに準備させろ!」


司令官の命令は直ちに各小隊に伝えられ『それら』への攻撃準備が進められる。

命令が伝えられると同時に各小隊で配置転換が行われ、後方に待機していた戦車を最前面に移動させ、その両脇に筒状の物を持った兵員が等間隔に横一列に整列する。


「各小隊及びM1の配置転換完了したとの事です。」


「了解。まもなく空軍も到着する…噂をすれば…だな。空軍の攻撃開始とデータリンク同調する。」


司令官が聞こえてくる音に気付き夜空に視線を向ける。

そこには『それら』に向かって飛行してくるF-35の光が見える。


『こちら第20戦闘航空団所属ブラックベア01、これより20秒後に巨大物体に対してミサイル攻撃を開始する。地上部隊にはデータリンク情報により同調攻撃を頼む』


現場司令官のインカムに上空を飛行するF-35を指揮するパイロットより連絡が入る。


「承知した。15秒後に地上部隊も攻撃をかいしるす。各小隊に連絡!!」


同時に各小隊へと伝えられる。

上空では編隊飛行を行っていたF-35が2機単位で別れ『それ』へと回り込む。


『ブラックベア01より各機へ、攻撃を開始する!! 各割り当てられた標的に対し!ライフル!!』


隊長機より発せられた命令により各F-35のウェポンベイが開き空対地ミサイルが一斉に発射される。

時を同じくして地上からもM1及び歩兵から徹甲弾と対戦車ミサイルが浴びせられる。

------------------------------------ここまで-----------------------------------------------

この小説に出てくる人名、組織名は全てフィクションです。

同名の人物、組織が有っても全て関係の無いものですのであしからず。

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