第14話 風の中の獣 序

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 二匹の獣は、小さなその身にそぐわぬ獰猛な表情を浮かべ、倒れた彼女の背に取り付いている。


 いつもは、――まだ私の手の中にいた時は、幼い小動物然として、あんなにかわいかったのに。

 最初は小鳥のような大きさだった。それが今は、大人の猫ほどの大きさに成長してしまっている。


 どうして、もうやめて。もういいんだってば。なんでこんなことするの? 酷い。私はこんなこと望んでない。血が欲しければ、私のをあげる、だから、もうやめて。


 うつ伏せに倒れているあの子の制服の背中が二か所、十字状にぱっくりと裂け、十センチほどの切れ目からとろとろと血が流れている。

 二匹の獣は、その十字にクロスした二か所の傷口にそれぞれ取り付いて、流れ出る血を啜っている。


 不意に一匹が顔を上げた。赤いものを滴らした口が開く。その両脇の白い牙が一瞬きらめいた。

 キィーキーキーキー

 そいつは、小さく甲高い声をあげた。


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