きんぎょ鉢

 時計塔のあたまのまわって六時五十分もうすぐそこ。


 いつかであった女のいったよう、知らない金魚鉢なか、鯉の詰まっていて、黒い眼だけしきり窮屈げまわっている。もしかしたらあれの人魚だったやもしれない。しかしもう捨ててしまったから、あれのほんとうなんだったのか、だれもわからない。


 はっきり存在していて、事実なんのためにあったのか不明確である。もし捨てるためなんだとし、いったいそれは意味たれるだろうか。


 六時五十分もうすぐそこ、ざんねんながらあの時計塔なら壊れている。

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