17 お昼休憩
午前の部が終わって、両親たちの元に向かう。
「お疲れ様、陽依!」
「かなり豪快な玉転がしだったな! すごいぞ、陽依! さすが、俺の娘だ!」
お父さんが、わたしの頭をなでた。
力強くて、ちょっと痛い。
「ありがとう、お父さん」
わたしが照れ笑いを浮かべていると、
「お待たせしました」
アオくんがやってきた。
「あら、アオくん、カッコよくなったわね〜! 自分の家族だと思って、エンリョなく食べてね!」
「ありがとうございます、柚月さん」
「ハッハッハ、俺の若い頃にそっくりなほどイケメンだな!」
「なんでアオくんが我が家に似ているのよ……」
そうツッコむと、アオくんが「ぷっ」と吹き出した。
そのあと、和気あいあいとお昼ご飯を食べる。
アオくんは思っていたよりも食べて、家族みんなで驚く。
そんな細い身体のどこに入っているんだろう……。
三段もあった重箱の中身をすっからかんにしたあと。
レジャーシートの上に寝っ転がる。
視界には青色の空が広がっていて、気持ちの良い春の風が、わたしの身体を撫でた。
今日は、絶好の体育祭日和だ。
「食べてすぐに寝るとブタになるぞ」
「ブタになってもいいし。ほら、アオくんも寝っ転がってみなよ。気持ち良いよ!」
「そうか?」
そういうと、わたしのとなりに寝っ転がった。
寝返りを打てば身体がぶつかってしまいそうな至近距離にドキドキする。
「なぁ、陽依」
呼ばれて、アオくんの方を向く。
風が吹いて、アオくんの猫毛が舞った。
「なに? アオくん」
「その、俺とダンスを踊ること忘れてないよな」
「もちろん! 忘れてないよ! だって、ずーっとそのことばっかり考えていたし!」
最後まで言って、ハッとする。
わたし、告白みたいなことを言ってない!?
「い、今のは忘れて!」
「いーや、一生忘れないかな」
「なんでよ!」
あまりにも恥ずかしくて抗議の声を上げる。
アオくんは嬉しそうにはにかむと、「ナイショ」と、口元に指を当てた。
その表情があまりにもカッコよくて見惚れてしまう。
心臓がドクドクドクドクドク……って、高鳴り出した。
ああ、こんな状態じゃ、午後の種目に集中できそうにないよ!
ほてった顔を冷まそうと、水筒を取りに戻るのだった。
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