16 玉転がし
パンッ、パンッ!
ピストルの音とともに、体育祭が始まった。
校長先生のながーい話を聞いたあとは、選手宣誓の時間だ。
赤組代表のアオくんと、白組代表の蓮見先輩が、台の上に立つ。
「「宣誓! 私たちは、日々の練習で培った技術と力を全て出し切り、チームメイトと力を合わせて最後まで諦めずに戦い抜くことを誓います。令和×年五月二十五日」」
「赤組代表、氷高碧」
「白組代表、蓮見司」
選手宣誓が終わると、主に女子たちの黄い歓声が響き渡った。
そこから、種目が始まった。
一年生と二年生可愛らしいダンスにいやされたり、三年生が今話題のミュージカル映画の曲に合わせてムカデ競争をしていたり。
あっという間に時間が過ぎていく。
気がつけば、玉転がしの時間になっていた。
「頑張ってね、ひよ、凛音」
「ありがとう、美咲ちゃん!」
美咲ちゃんに手を振ってから、ペアの凛音ちゃんと一緒に、待機場所へと向かう。
待機場所へといく途中、六年生の観覧席の前を通る。
アオくんの姿を見つけて、軽く手を振る。
まるでアオくんがいるところにスポットライトが当たっているように、すぐに見つけられたんだ。
アオくんはわたしのことに気づいてくれて、手を振り返してくれた。
が、ん、ば、れ、よ。
そう口を動かしている。
アオくんに応援されたら、やる気がみなぎってきた。
思わずにんまりとした笑みを浮かべていると、凛音ちゃんがわたしの肩を小突いた。
「ひ〜よ〜り〜ちゃ〜んっ、いまのはなに!? かなり仲がいいじゃん!」
そういえば、凛音ちゃんにわたしとアオくんが幼なじみってことは言ってなかったっけ。
「実はね、わたしとア……氷高先輩は幼なじみなんだ」
「え、幼なじみ!? すごいね、あんなイケメンと幼なじみだなんて!」
「えへへ」
アオくんのことを褒められると、自分のことのように嬉しく感じるよ。
「あ、その表情だと、氷高先輩のことが好きなんだ?」
「実は、そうなんだ」
恋バナ大好き凛音ちゃんにはお見通しみたいだ。
「あたし、応援してるね! ねぇ、後夜祭のダンスに誘った?」
「うん」
「返事は? 返事はどうだったの!?」
身を乗り出しながら、聞いてくる。
またもや、海老反りの状態になる。
「OKを貰えたんだ」
「えーっ、すごい! あの難攻不落の氷高先輩が落ちるだなんて! もしかしたら、もしかするかもよ?」
「え〜、そうかな〜?」
アオくん、わたしに対していっつもイジワルだし。
好意を寄せられているかは分からないけど……。
そうだったら、嬉しいなって思う。
ふたりでキャッキャッと恋バナをしていたら、あっという間にわたしたちの番がやってきた。
凛音ちゃんと力を合わせて玉を転がして、二位でフィニッシュすることができたのだった。
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