13 最終確認

 あれから、また数日経った。

 先生たちと何度も打ち合わせをして、わたしたちなりの種目を作り上げていく。

「まず、グラウンドと校舎内で分けるっていうのはどうだろうか?」

 今日は、最終確認をする日。

 体育祭まであと五日間。いよいよ本番が近づいてきて、心臓が高鳴る。

 今までは参加する側だったから、楽しみで胸がドキドキしていたけど、今回のドキドキはちがうよ。

 わたしが発案した種目が実際に行われると思うと、「上手くいくかな」って気持ちの方が強いんだ。

 失敗したらどうしよう!

 もしも、「こんな種目つまんない!」って言われたらどうしよう!

 そんな不安がずーっと頭の中をグルグルしている。

「陽依、話を聞いているのか?」

 話を振られて、ドキリとした。

 考え込んでいたせいで全然聞いていなかった!

「うん、聞いているよ!」

 適当に誤魔化す。

 アオくんはじとーっとした視線を送ると、また話し始めた。

「廊下を走る許可はとってるよな」

「うん、安全面を考慮して、廊下の長さをから数メートル短い距離を走ることになっているよ。それにしてもよく許可がとれたよね、校則で禁止されているのに」

「うちの学校、校則はあるけど、かなり緩いからね。基本的には個人の意思を尊重する方針だしねぇ」

 わたしの疑問に、かれんさんが答えた。

「そうなんですね」

 そんな会話をしていると、生徒会室に蓮見先輩がやって来た。

 蓮見先輩は、放送委員との打ち合わせに行っていたんだ。

「実況の打ち合わせはどうだったんだ?」

「バッチリ、完了! 試しに実況原稿を読んだらみんながオレのイケボに聞き惚れてさぁ。なぁ、碧。当日オレ、実況の方にも参加してもいいか?」

「まぁ、時間があったらな。まずは、生徒会の活動の方を優先しろよな」

「はいはーい、ちゃちゃっと終わらせて、実況の方に参加するわ!」

「はい、その話はまた今度しような。次は、動画配信部によるカメラワークだな。花園、動画配信部に交渉しに行った結果を報告してくれ」

「えーっと、部長と話し合った結果、まずグラウンドと校舎とプールに四人ずつ配置することになっているわ」

 そこで一回区切ると、校内マップを指差した。

「部員はこことここに配置をして、大体こんな感じに撮れるみたいで……」

 スマホで撮った写真を映しながら、説明をしている。

「……こんな感じでどうかな」

「さすが花園だな。文句をつけようがないほど完璧な配置だ。花園に頼んでよかった」

「ありがとう、氷高くん」

「次は陽依だな。クライミングウォールの手配は済ませたか」

「うん。佐々木先生に頼んだよ。明日届く予定」

「そうか。次は……」

 どんどん話が進んでいく。

 しばらくすると、下校時間を告げるアナウンスが聞こえてきた。

「今日はここまでだな。前日の準備までは生徒会がないから、気をつけるように。また、詳細は連絡する。じゃあ、解散!」

 また、みんなと一緒に帰るのだった。

 

 


 

 

 

 

 

 

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