十四 ヘビオは容姿で女を選んでる

《エッちゃんは腰がくびれてお尻が大きめで、かわいいスタイルをしてる。ポッチャリしたエッちゃんとのニャンニャンを思うと興奮する。

 エッちゃんの実家が何をしてるんだろう?実家が商売してるんなら、エッちゃんとラブラブになって、実家の商売に合わせてそれなりのことをしよう・・・》


 あたしが、ヘビオを相手方ボイスチェンジしてメグに伝えたヘビオの思いを、トラがメグに捕捉説明する。

『ヘビオは自分の心を満たすため、その場その場の考えだけで生きておる・・・。

 その場その場の考えにウソはない。

 ヘビオは女を体型と身体の機能で選んでおる・・・』


 メグの気持ちが一瞬に醒めた。今まで積みあげてきた熱い気持ちがすっうと引き、身体も冷めてゆく・・・。

 ヘビオとのイチャイチャとニャンニャンの思いが放出していた幸せホルモンは消えて、メグの高揚したラブラブな気持ちも消えた。芯からの湧きだした身体の熱さは消え、冷たくなりはじめた・・・。

 メグの中で、カチッと何かが切り換った。メグがイラッとした。教壇を見ながらベビオとのニャンニャンを思いだしていたメグが、エッちゃんを見て、気持ちをヘビオへむけた。


メグは思ってる・・・。

 ヘビオ。オマエは、あたしにベタボレだ。

 あたしといっしょになったら、実家の家業を継ぐようなことを思ってた。

 大好きなあたしと毎晩ニャンニャンして、あたしが作るおいしい料理を食べる。

 オマエも料理をおぼえて、オマエの作った料理を、あたしにも家族にも客にも「うまい」といって食べてもらう。

 そしたら、オマエとの楽しい生活がつづく。

 オマエがいるなら、嫌いな実家でもふたりで生活できる。

 キライな中華料理も、ふたりで仲良く作れそうだ・・・。

 あたしは勝手にそう思ってた。

 オマエの気持ちを確かめずに勝手にそう思ってた。


 あたしはオマエの気持ちを聞いたことがない。

 あたしもあたしの気持ちをお前に話したことはない。

 オマエは、あたしとのことをあたしに話したことはない。

 あたしがわかってるのは、オマエがあたしを好きなことだけだ。

 あたしもオマエが好きだ。

 オマエはあたしを好きだ。

 オマエはあたしとニャンニャンするのが好きだ。

 あたしもオマエとのニャンニャンが好きだ。

 ふたりが好きだったんは、ニャンニャンか・・・。


 オマエ、あたしが家業を嫌ってるのに、中華料理を作るのがうまいのを知ってる。

 なんでも手際よく料理するあたしを『見よう見まねで憶えたんなら、天才と言える技術の持主だ』と絶賛した。

 あの言葉、お世辞じゃなかった。

 あの言葉で、あたしは家業を継ぐ気になった。

 くそ・・・。

 オマエの気持ちがわかんないぞ・・・。

 いや、わかってる。

 オマエはあたしとのニャンニャンが好きだ。

 あたしが天才的に料理がうまいのを認めてる。

 オマエは実家の家業を継ぐ気でいる・・・。


 メグはヘビオと暮らし、ふたりの思いを大切にしたかった。

 あたしの中でアプリの相手方ボイスチェンジが起動した。メグの心に浮ぶ未来に関する相手方ボイスチェンジだ・・・。


 メグの心に、未来が映った。

 家業に勤しむメグとヘビオ。ふたりはラブラブだ。

 その裏で、ヘビオは知りあいの女や中華街の女とニャンニャンに勤しんでいる。

 ヘビオの相手はみんな似ている。

 その女たちのひとりが、エッちゃんの姿と重なった。

 メグが気づいた。

 そうか!ヘビオは容姿で女を選んでるんだ・・・。

 性格は二の次なんだ・・・。


『サナ。うまくいったな。気づきおったぞ』

 トラがあたしに、相手方ボイスチェンジしたヘビオの心の実態をメグが理解した、と伝えてきた。

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