十 メグに送るみんなの動画
図書館をまわりこむとアキとエッちゃんとママはそこにいた。ほかにも三人いる。
アキ(瀬田亜紀)があたしを見つけて大きな声でいう。
「あたしたちと似た体型の
適当に雑談して、動きまわってるから、動画撮っていいよ!」
「わかったよ!」
あたしは近づきながら、スマホでみんなの様子を動画に撮った。
あたしはみんなの近くへ歩いた。
「急なのに、集ってくれてありがとう!!」
「なんとしても、メグとヘビオをくっつけたいなあ。そして、中華を食べたいなあ」
アキは真剣に考えている。色気より食い気だ。
「でも、ヘビオがあたしたちに目移りすれば、二人の関係は消えて、中華も消える」
エッちゃん(松岡悦子)もまじめに考えてるけど、食い気が強い。
「すべてが、この魅惑的なボディーのせいね。ああ、あたしはなんと罪深い女なの・・・」
身体をくねらせてママ(野本雅子)がふざけてる。メグよりあたしの方がセクシーよと思っている。
「他の三人も同じようなことを考えとるな。動画は撮れたか?」
トラがリュックから身を乗りだした。
「ああっ!トラも来たんだ!」
あたしがみんなに近づいたら、エッちゃんがリュックのトラを見つけた。頭を撫でている。
「エッちゃん、あいかわらず、かわいいのお!」
トラがエッチャンに、ゴロゴロ、喉を鳴らしてる。
「ありがとう、トラ・・・」
エッチャンはトラの言葉に驚いていない。
なんでだ?なぜ、驚かない?トラがしゃべってんだぞ!驚け!ちいっとくらいは驚け!
そう思ってみんなを見るが、みんなも驚いていない。なんでだ?
「ずいぶん上達したね。トラもずいぶん慣れてきたね」
エッちゃんはそういう。動画を撮っているスマホから、
『サナ。腹話術が上達したね。トラもサナの動きに合せるようになったね。ずいぶん練習したんだろうな・・・』
とエッちゃんの考えが伝わってきた。どういうことなんだろう?
「驚かんでいい。わしにはわからんが、アプリの何かが作用しとるらしい。わしが話すのは、サナの腹話術と思われとるぞ。そのまま調子を合わせておけばいいぞ」
トラがあたしの耳にささやいた。
「わかったよ、トラ。調子を合せとくよ」
そういったとたん、トラの考えていることが変った。
「動画は撮ったのお。わし、ちょっくら、散歩してきていいかな?」
トラはシロに会いたいのだ。
「ああいいよ。そしたら、昼休みにここに来るから、シロといっしょにもどってきてね。鮭のおにぎり買っておく。味噌汁も」
「オオッ!すまぬな!では、ちょっくら、行ってくぞ!」
トラがリュックから、芝生へ舞い降りた。そして、樅の木陰へ走り、その西側にある柘の垣根を潜って、フェンスを跳び越え、学内から出ていった。
「アアッ!トラが行っちゃったよ!迷子になっちゃうよ!」
走っていったトラを見て、アキ(瀬田亜紀)が大声でいった。
「大丈夫だよ。昼休みにトラの大好物を持ってここに来れば、トラはもどってくるよ。そう、話してあるよ」
あたしは、トラの大好物、鮭のおにぎりと味噌汁を説明してあげた。
「そうなのか?でも、良く仕込んだね。リュックに入ってても、騒がなかったんだね」
ママ(野本雅子)が感心してる。隣県のD市から、トラは一時間以上リュックに入ったまま移動してきたと思っている。
「あれで、トラは人並みに知能が高いんだ・・・」
あたしは、パソコンを見て考えるトラの行動を説明してあげた。
「そうだね。考える猫だもんね・・・」
アキは以前あたしが見せたトラの動画を思いだしている。動画のトラは鳴いているが、その声は人が話してるように聞えたのだ。
「迷子にならない理由が、何かあるの?」
エッちゃんは、トラがこの辺の地理を知らないと思っている。
「以前も連れてきたことがあるよ。友だちができたんだ。会いにいって、いろいろ教えてもらってるはずだよ・・・」
「そうなの!」
トラは人並みの行動をしているんだ、とエッちゃんが感心している。
あたしは、メグに送るみんなの動画の撮影を終了して、スマホのボイスチェンジャーのアプリを停止した。そろそろ休み時間が終る。
「ところで、みんなは、この先、メグとヘビオがどうなると思う?
昼休み、あたしは、トラを迎えにここに来るよ。
よかったら、みんなも来てほしいな。そして、メグとヘビオがどうなると思うか、みんなの考えを教えてね」
あたしはみんなに、メグとヘビオの今後を聞きたかった。
「みんな、ここに来るよ。最初から、そのつもりだよ。この休み時間じゃ短いって話してたの。天気もいいし、ここでご飯にしようよ」
そう話しながらエッちゃんは、トラのご飯を忘れないでねとあたしにいった。
「ありがとう、みんなに感謝します!」
あたしはみんなにおじぎした。
「そうかしこまらなくていいよ。みんな、メグを心配してるんだ。
くわしいことは昼休みにしよう。さあ、講義がはじまるよ」
ママ(野本雅子)が講義に遅れないよう、みんなに注意した。
「つづきは、昼休みに・・・」
あたしたちは、教養棟の大講義室へ移動した。月曜の第二限は共通講義の哲学だ。
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