愚か者
ネルシア
愚か者
ほぼ毎日過ごす私の親友。
今日も他愛のない話をする。
「そういえば美紀の誕生日っていつだっけ?」
「んっ!!とね、あと1か月後の10月8日だね。」
誕生日を聞いてきてくれたことだけで心が跳ねる。
「何か欲しいものある?」
さらに私の頭に血液が昇るのが分かる。
「えっと・・・じゃぁ私に似合う服を一緒に選んでほしい。」
「わかった!!じゃぁ、8日一緒に出掛けようね!!」
映美が無意識に手を取ってニコッと笑う。
あぁ、かわいいなぁ・・・。
好きだなぁ・・・。
「うん!!一緒に出掛けようね!!」
あと少し我慢すれば映美に誕生日プレゼントを買ってもらえる。
そ
の期待に胸を膨らませてそれだけを日々の糧にして過ごしていく。
そして一か月後。
「あ、やっほー美紀!!」
今日も一緒に過ごす。
ただ、誕生日おめでとう、を期待していた私は胸がもやもやする。
いや、記念日を忘れっぽい映美だから仕方がないし、
そもそも誕生日を祝ってもらえて当然と考えるのも傲慢だとは思う。
でも、
それでも、
親友から誕生日を祝ってもらえない
というストレスが私を苦しくさせる。
この思いは一方的なんだって。
こんなに映美を大切に思っているのに、映美は私のことは
「一時の仲のいい親友」
でしかないんだって。
「そういえば、あのお店新しいタピオカドリンク出したんだって!!」
私の誕生日はそっちのけで、うきうきと話し出す映美。
どこか冷めた感情を持ちつつ、でも、その新しい飲み物に期待を膨らませているはじけるような笑顔の映美にかわいいなという気持ちが混ざる。
「そうなんだ!?一緒に行こうか。」
「うん!!行こ行こ!!」
私の腕を取って小走りになる。
引っ張られたため、転びそうになりながら映美と笑いながらかけていく。
きっとこの先もこうなのだろう。
好きな人と一緒に過ごすために、自分がして欲しいことを主張できない愚か者。
そして映美に
好きな人ができても
その人と結婚しても
その人と子供ができても
映美と少しでも過ごせる時間があるのならば、永遠と思いを伝えられないのだろう。
愚か者 ネルシア @rurine
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