リオ、魔法の講師になる!その1

「よーし!今日の授業は終わるぞー。みんなー、時間ある時に魔力循環しとけよー。魔力操作が上達するからなー!」

 

「「「「はい!ありがとうございました!!」」」」

 

 

 リオはアンペル学園で魔法の講師を始めた。キッカケはナナの激怒だったよ。

 

 

『アンタねー!まーた食べれないもの作って!いい加減にしてよー!?』

 

『うーん、おかしいぞー?どうしてこんな味になったんだろうなー?時間あるから研究してるんだけどなー』

 

『それをあたしで実験するなー!もう、そんなに時間あるんだったらアンタも働きなさいよ!』

 

『働くったって、今さら冒険者やるのかー?手続きとかめんどいぞー』

 

『じゃあ、アキと一緒に講師やったら?学食っておいしいらしいから、ちょうどいいんじゃない?』

 

『講師ー?何を教えるんだよー?』

 

『アンタが1番得意なのは何?魔法教えればいいじゃん!リナもケンも、コルくんやアキだってアンタが仕込んだでしょ?向いてんじゃない?』

 

『おー、そう言えばそうだなー。じゃー、アキに聞いてみるぞー』

 

 

 そしてボクが帰ってくると、

 

 

『おー、アキ!お帰りー』

 

『ただいま〜、ってリオ?どうしたの?···まさか、夕食をタカリに来たの?』

 

『違うぞー!···でも、夕食作ってないからお願いしたいぞー!』

 

『違わないじゃん···。で?違うって事は何か相談事なの?』

 

『おう!オレって魔法を教える講師になれるかー?』

 

『えっ!?いきなりどうしたのさ!?』

 

『ナナから家にずっといるぐらいなら働けー!って言われてなー。魔法の講師はどうだ?って言われたんだー』

 

『そういう事ね。じゃあ、アイリさんに推薦状書いてもらって、それで面接試験が通ればいいんじゃない?ボクがそうだったしね!』

 

『試験あるのかー···。ちょっと厳しいぞー』

 

『元整調者ピースメーカーだから大丈夫と思うけどね』

 

 

 3日後。

 

 ボクとリオはアイリさんにお願いしていた推薦状を受取りに領主邸ヘ転移したんだ。

 

 

「アキさん。こちらがリオの推薦状ですわ」

 

「ありがとうございます、アイリさん」

 

「おー、ありがとなー!」

 

「しかし、リオが魔法の講師ですか···。ドジでバカでおっちょこちょいな生徒を量産しないか心配ですわ~」

 

「そんな事教えるわけないだろー!?

 リナもケンも!それにアキやコルくんまで魔法が上手に使えてるじゃないかー!

 ちゃーんと魔法を使えるようにしてやるからなー!」

 

 

 あぁ~、またケンカし始めちゃったよ···。ホント、仲がいいなぁ~。

 

 

 そして、ボクたちはアンペル学園に向かったんだ。事前に学園長には話をしておいたんだけどね。


『面接なんてしないから、即採用!』


 って言い切っちゃったけど、ボクから


『結果は決まってても面接はちゃんとやって下さい!』


 ってお願いしといたんだ。


 

 さて、学園長の部屋にやってきて、リオは扉を緊張した面持ちでノックした。

 

『どうぞ』の返答の後に入ってもらった。ボクの付き添いはここまでだね。

 

 一応、前日には面接の予行演習をリオの家でやったんだよ。

 

 

『では、リオさんはなぜ講師になりたいと思われたのですか?』


『···なんだかオレが整調者ピースメーカーになった時に神がやった質問と一緒だなー』


『えっ?そうなの?その時はどう答えたの?』


『応募なんてしてないぞー!って言って終わったなー』


『えっ?じゃあ、応募してないのにどうして面接したの?···もしかして推薦?』


『そうだぞー!あの世からオレの体術の師匠が勝手に推薦してたんだぞー!』


『あの世から推薦って···。神様ってそんなことできるんだなぁ~。じゃあ、気を取り直して、さっきの質問は定番なんだけど、どう答える?』

 

『おー!ナナが、暇を持て余してるなら働けー!って怒ったからだなー!』

 

『···あの〜、リオ?それじゃあダメだよ?

 志望動機は『自分はこの仕事に向いてる!』って売り込み・・・・なんだよ。

 だから『ナナに言われたからだ』って言っちゃったら『イヤイヤやるからやる気ないよ!』って宣言しちゃってるのと一緒になっちゃうんだよ』

 

『おー!なるほどなー!じゃー、

 魔法をうまく使えるし、子どもや知人に教えたら上手になったから、教えるのが向いてるなー!って思ったので志望したって事でいいかー?』

 

『うん、いいね!やっぱりいい印象を持ってもらった方がいいからね。自分の言葉で言うのが大事なんだよ。

 じゃあ、次の質問ね···』

 

 

 ボクが面接受けた時と同じような質問をしておいて、ちゃんと答えられるようにしておいたんだ。

 

 さて、どうなったんだろうね?

 

 

 30分ほどでリオが出てきたんだ。

 

 

「お疲れさま。どうだった?」

 

「···アキー?昨日やった予行演習はムダだったぞー」

 

「えっ!?そうなの?何聞かれたの?」

 

「学園長から、オレの事は本で知ってるからわかってるんで、いつから来て何を教えるか?ってだけだったぞー」

 

「おぉぅ···。いきなり条件面から入ったなぁ~。まぁ、やる前から内定してたしなぁ~。で、いつからするの?」

 

「4月の授業が始まる時からだってー。『かりきゅらむ』ってのを2月末までに欲しいんだってー。かりきゅらむってなんだー?」

 

教育計画カリキュラムだよ。いつまでにこれだけ教えてできるようにするってのをあらかじめ作るんだよ」

 

「···それって大変じゃね?」

 

「最初は大変だよ?でも、きっちり作って学生に見せたら人気になると思うよ?」

 

「作り方なんてわからないぞー!アキー!手伝ってくれー!」

 

 

 ということで、結局はボクの仕事が増えてしまったよ···。

 

 

 さて、リオのカリキュラム作成を手伝うにあたって、作り方をおさらいしておこうか。まぁ、人によって作り方違うんだけどね。


 簡単に言えば

 

 ・教える目的

 ・達成すべき目標

 ・目標を達成するための道筋及び手順

 ・道筋にかかる時間及び機材

 

 こんなものかな?ボクの場合は逆から考えて、期間中に目標を達成するために『いつまでこれができるようにするか?』って事で計画してるんだよ。

 

 さて、この手法でリオの魔法のカリキュラムを作ってみようね!

 

 

「リオ?リオの授業の最終目標はどうする?」

 

「そりゃー、『魔法が使えるようになる』だよなー」

 

「じゃあ、それは初級って事でね。中級と上級はどうしよう?」

 

「···えっ!?そこまでやるのかー!?」

 

「もちろん!初級をクリアしたら、次は何を目標にする?」

 

「むー···。いくつかの属性を使いこなせるかなー?」

 

「じゃあ、最後の上級は?」

 

「うーー···。魔法戦···、かなー?」

 

「いいんじゃない?じゃあ、次は初級の魔法が使えるようになるためには何をするのか?を考えようか!」

 

「···なぁー、アキー?ちょっと休憩したいぞー。甘いものが恋しくなってきたぞー!」


「まだ始まったばかりなんだけど···?」 

 

 

 どうもリオはこういった事を考えるのは苦手のようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る