ハル過去編-07 ハル、運命の出会いをする!

 それから2年近く経った。あれからも各地を文字通り飛んで回り、各地で頭を悩ませていた魔獣を退治して回っていた。


 ナナとのコンビネーションも最高だ。ナナはたくさんのバフが使えるので、私好みにカスタマイズしてもらった。


 一応6パターン用意してもらった。このうちの1つは自爆特攻ものだ。ナナは『なんでこんな物騒なバフを思いつくの!?』って言ってたけど、渋々組んでくれた。


 これは戒めという意味と、万が一私の命と引き換えにしてでも守りきらないといけないという状況になった時にトランスと併せて使うものだ。当然、使うような状況にはなりたくないね。


 また、コンビを組んで初めて有効だと知った能力があった。『魔力共有』というもので、ナナの魔力も使用して魔獣退治ができるようになっていた。


 もともとナナはバフがほとんどなので、魔力消費が少ない。常時余りまくっていたので、私が有効活用させてもらっている。里でも使えてたけど、ナナほど魔力がみんななかったから使ってなかったんだ。


 これによって継戦能力が大幅に向上し、魔獣との長期戦が可能になった。


 今のところ、厳しかった1戦をのぞいてトランスも使用していない。初めてナナに見せた時は驚いていたね。



 そんな事をしていたら、いつの間にか『凄腕』と言われるようになってしまった。···私よりも強い人なんていると思うけど?



 そして···、私の運命はこの一つの依頼を受けた事で大きく決定づけられてしまうのだった。



「あっ!そうだった!!ハルさん!指名依頼が来てるんだけど」


「···誰から?」


「皇国の情報部ってところね。ハルさんの名声は国にも伝わっちゃってるのね~!国からの指名依頼なんてよっぽどじゃないとないわね~。もちろん、請けるでしょ?」


「···内容は?」


「さすが即答は避けるわね~!それでこそ『凄腕』よ!え〜っと···?ここから南にあるボレンという港町に面する湾内に多数の魔獣が居着いて、湾内を航行する輸送船が動かせなくなって物流が止まっちゃってるみたいね。『現地に白銀竜を連れた凄腕の協力者2人』と共同で掃討してほしい···、ですって」


「白銀竜を連れた協力者ねぇ~。あたしたちと同じようなコンビが他にもいるのね~」


「そうみたいですね~。旅人って事は冒険者じゃなさそうですけどね~」


「ハル、どうする?あたしは別にいいわよ〜。国に恩を売れるって早々ないしね~」


「···いいよ。じゃ、行こっか」



 たまたま寄った皇国の冒険者ギルドで、国から指名依頼が来ていた。


 ···どうして私たちがここに寄ると知ってたんだろう?今日来たばかりなんだけど?ま、いっか。



 私たちはすぐに出国してボレンの港町へ飛んでいった。街道沿いに飛んでいくと、湾が見えてきた。大きな湾なので、陸路だとかなり迂回しないといけない。渡し船はちょうどショートカットする航路を通るようで、両岸にはそこそこ大きな港町になっていた。


 どっちにその凄腕の旅人がいるんだろうね?降りて聞いてみよう。



「···あの、凄腕の協力者がいるって聞いてきたんだけど、誰?」


「は?凄腕の協力者?う〜ん···。こっちは商人ばっかりしか見かけないからなぁ~」


「···そう。···ボレンの町って聞いたんだけど?」


「そりゃ湾の反対側だな!ここじゃないよ」


「···そう。···ありがと」



 こっちじゃなかったね。またナナに飛んでもらった。


 確かに海中にはものすごい数の魔獣がいるようだ。···でも、どうやって倒そうか?ちょっと私の攻撃手段だと対処が難しそうだね。その凄腕の協力者に期待しようかな?


 いろいろ考えていたら目的地であるボレンが見えてきた。こちらも足止めされた商人や旅人たちで溢れかえっていた。


 とりあえず港に着陸しよう。これだけ多いと誰が誰だかわからないから役所で聞いてみようか?


 着陸すると、大勢集まってきた。そんな中で強そうな気配を感じる2人がいた。この人たちかもしれないけど、一応役所の場所を聞いてみよう。



「···ここの湾内に魔獣が出たって聞いて討伐要請に応えて来たんだけど、役所ってどこにあるの?」


「···え~っと、なんでボクにそれを聞くんです?ボクたちは旅の途中なんで、この村の人じゃないんですけど?」


「···今外に出ている人たちの中であなたとお隣の人が最も強そうだったから。···魔獣を討伐しに来た人なんでしょ?」


「いや、違いますよ!ボクたちじゃ海の魔獣討伐なんてできないですよ?ここでこうやって釣りしながら凄腕冒険者の方を待ってたんですよ」


「···そう。こちらの思い違いだったかな。···でも間違いなさそうなんだけど」


「ちょっと、ハル。いきなり強さだけで当たりつけちゃダメじゃない。お嬢さん・・・・、ごめんなさいね。ツレって結構思い込み激しいところがあってね。迷惑かけたわね」


「ああ、いえ!気になされないで下さい。討伐頑張って下さいね」


「···何言ってるの?あなたたちも私たちを手伝うんだよ?それだけ強いのに遊ばせておくわけにはいかないよ?」


「ハル!この人たちは関係ないでしょ?確かに依頼内容には『現地に凄腕の協力者2名・・・・・・・・がいるから、共同で討伐するように』って内容だったけど、この子たちじゃないと思うわよ?」


「···でも、ここで最も強いのは明らかにこの二人。だから依頼内容通りだとしたら一緒に討伐をしてくれるはずだよ」


「···えっ!?何ですか!?その依頼内容は?ボクたちは関係ないでしょ!?」


「そうだぞー!別にオレたちは凄腕なんかじゃないぞー!まぁ、オレは確かに少し強いほうだけどなー」


「あら?あなた白銀竜の一族ね?···ということはハルの言った通りだわ!この二人が現地にいる凄腕の協力者ね。あたしはナナ。これから討伐に協力してくれるってことで、よろしくね!」


「はぁーー!?なんでそうなるんだよー!?誰だー!?その討伐依頼出したヤツはー!!」


「ええっと、『皇国の情報部・・・』って部署ね。どういう部署か知らないけど、皇国であなたたちの事を知ってる人じゃないのかしら」



 ナナが言ったら2人とも黙っちゃったね。という事は知ってるんだ。


 白銀竜も初めて見たね。それと一緒にいる女の子・・・。私たちとちょっと似てるかな?


 とりあえずこの2人を連れて役所に依頼の件を伝えたら、宿の特別貴賓室に案内された。


 そこで自己紹介したら、女の子と思ってた子は男の子だった。···ビックリしたね。こんな女の子のような男の子がいるんだね。

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