ハル過去編-06 ハル、ナナのバフに感動する

 ひょんなことから青竜のナナと一緒に旅をすることになった。一人が気楽だったんだけど、私の言う通りにしてくれてるからいいけどね。


 ちょっと気になることがあったからナナに聞いてみた。



「···私乗せて飛べるの?」


「もちろんよ?乗ってみる?」


(コクン)


「じゃあ、背中に乗ってね~。翼以外の好きなところに座ったらいいわよ~」



 ナナに乗せてもらってから、ナナは飛び始めた。森の木の高さの3倍くらいのところを馬車よりも速い速度で飛び始めた。


 高いところを飛んだことでかなり遠くまで見渡せた。こんな景色を見るのは初めてだ。移動手段として考えてもナナといる方がなにかと楽そうだね。



「どう?初めてだと思うけど空の旅は?」


「···うん。なかなか景色がきれいだし、快適」


「じゃあ、どこへ向かおうかしら?できれば冒険者ギルドがある大きな町がいいわね~!」


「···街道沿いに南へ向かうと王都があるんだって。そこならあるかも?」


「王都?···あ~、行ったことあるけどあそこにはないわよ?別の町にしましょうか?」


「···だったらもっと南?」


「いいわよ!今日の夕方ぐらいまでなら大丈夫だからね~!行けるところまで行くわよ~!」



 そうして飛ぶこと2時間ほど。王都の東に位置しているチデンという町に着いた。門で審査を受けて中に入った。もちろん、ナナは人型になった。


 ナナが人型の姿になったのは初めて見たね。青いロングヘアーで私よりもちょっとだけ背が高い。見た目はお姉さんかな?


 ナナは身分証持ってたね。ただ、私と違って魔法で表示するタイプだった。どうもドラゴン族はこのタイプのようだった。



「さーて!まずは冒険者ギルドに行きましょうかね~!」


「···ダメ。···まずは宿を確保。···野宿ダメ」


「あ〜、それもそうね。こんな乙女・・が野宿したら狙われるものね~」


「···?···乙女?」


「何よ!?間違ってないでしょ!?」


「···乙女ってなに?」


「そこなの〜!?美しくて麗しい女性を指す言葉よ!」


「···麗しい?」


「あ〜、もういいわ。さっさと宿に行きましょ!」


「···?」



 よくわからないけど、とりあえず宿に行った。



「···二人で1泊したいんだけど?」


「いらっしゃい!ツインとダブルがあるけどどっちがいい?」


「···?どう違う?」


「ツインはベッドが2つあってダブルは大きな2人用のベッドが1つなんだよ」


「···ツインで」


「はいよ!10000ジールだぜ」


(コクン)(ピッ)


「これがカギだ。ゆっくりな〜!」



 2人部屋には2種類あるのか。今日もいい勉強になった。



「ふぅ~。久しぶりに泊まったわぁ〜!」


「···ずっと野宿?」


「···そうよ。お金使い果たしちゃって、食料も森で取ってたのよ。それも尽きちゃって移動してたらああなったのよ」


「···そう。じゃ、行く?」


「ええ!さっさと片付けちゃいましょう!」



 宿の正面が冒険者ギルドだった。そこでナナが手続きをしている間に、私は魔獣の換金を依頼しておいた。そこそこの値になったね。


 この金額を折半してナナに渡すけど、保存食代金を差し引いて、今日の宿代も引くと···。うん。まだまだナナには渡せないね。この後の夕食も引くし。



「ハル?あたしには報酬はあるの?」


「···まだまだ渡せないよ?」


「えっ!?いったいいくら借金があるのよ!?」


「···あと10万ジール、かな?」


「高っ!?な、何で〜!?」


「···保存食が高いから。今食べてる食事代も借金に上乗せ」


「あ〜···。これはさすがに削るとマズいしなぁ~。仕方ないわね。で?明日はどうするの?」


「···魔獣退治かな?」


「わかったわ!ハルの実力なら最高難度の魔獣もいけるでしょ!あたしのバフも加われば最強よ!」



 まだ請けるって言ってないけど?ま、いっか。



 翌日。


 依頼掲示板に行くと、やっぱりあったね。最高難易度の魔獣は『トム・ヤム・クン』3兄弟らしい。魔獣なのに知恵を使って連携して襲いかかってくるようだ。一瞬にして壊滅させられるので『ジェットストリーム攻撃』と呼ばれて恐れられているらしい。


 ま、なんとかなるかな?とりあえず請けておいた。止めとけって言われたけどね。



 さて、この魔獣はこの町から南の平原に住んでるようだ。


 まずはナナに飛んでもらう。ある程度目星はつけておきたい。


 ···いた。依頼にあった姿のまんまだ。燃えるような真っ赤の体をしたケモノだ。かなり大きいね。今は食事中のようだった。


 少し離れたところに2匹いた。周囲を警戒しているね。食べてるところを狙われないようにしているのか。近接戦闘は厳しいかな?


 いや、隠れる場所がないから、狙撃した時点でこっちの位置はバレる。となると気づかれずに暗殺かな?



「···ナナ?···一撃で決めれるバフはある?」


「攻撃力特化ね!あるわよ〜」


「···じゃ、かけて」


「はいな~!やっちゃえ~、ハル!」


「···暗殺技、影移動」



 この技は敵の間合いの外から影に潜り、敵の影から出て襲いかかる、短距離転移に近い。かなりの魔力を使ってしまうが、確実にやれる。


 そして、まずは1匹目。影が真横になったその瞬間!


 ザシュッ!!


 一瞬だけ影から出て喉元を切り裂いた。声すら出ないから他の2匹には気づかれていない。


 さらに影に潜り、次の1匹も同様に切り裂いた。


 この時点で最後の1匹が異常に気づいた。やられた仲間を確認している最中にそいつの喉元を切り裂いた。


 ···任務完了。思ってた以上に切れ味が増してたね。多少悲鳴が上がると想定してたけど、そうはならなかった。危なげなく退治することができたね。


 最後に退治した魔獣を血抜きしてから収納していると、ナナが上空から迎えに来た。



「ハル〜!大丈夫〜?」


「···ん。···終わった」


「やったわね~!これで借金は完済かしら〜!?」


「···そだね」


「良かったわぁ〜!」


「···ナナがいると仕事がはかどるね。···当分はよろしく」


「ええ!ハルと一緒なら稼げそうね~!こちらこそよろしくね~!」



 冒険者ギルドに戻って魔獣を出したら驚かれてしまった。今回の報酬は150万ジール。去年から依頼していて何人もの冒険者がやられてしまったために何度も増額したらしい。



「すごい金額だったわねぇ~!じゃあ、今日は借金完済記念に酒場で酒を飲むわよ~!ハルもせっかくだし、飲みましょ!」


「···酒?···飲んだら奇襲に対応できない。···遠慮しとく」


「町中で襲われ···、まぁ、高額賞金の魔獣討伐して懐が潤ってるのはみんな知ってるか···。じゃあ、またの機会にね!」



 こうして、ここでも魔獣討伐して有名になってしまった···。ま、いっか。




※ネタバレ集の量が少ないので、ここでネタをご紹介します


 トム・ヤム・クン

 もうそのままですね!料理名のトムヤムクンです。こちらもスーパーのカップラーメン売り場で閃きました(笑)!

 連携する魔獣の退治を考えた際に『デルタアタック』は本編で使っちゃったので、『ジェットストリームアタック』を使おうと考えた際に『3体名前考えるの厳しい~!』って思った時にカップラーメン売り場で思いついてしまったんですね!

 なので、今後の魔獣はカップラーメンからとるかもしれない!?

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