ハル過去編-05 ハル、パートナーに出会う!
スルタンを出て、私は街道をひたすら南に向かった。特に目的はない。強いて言えば私を捨てたっていう親がちょっと気になるぐらいかな?
一般的に冒険者が街の間を行き来する場合は商隊の護衛任務を請けていくと一石二鳥らしいけど、私は魔獣討伐で1000万ジールぐらい稼いでしまってる。
これって稼いでいるのかな?他の人がどれだけ稼いでいるか知らないからわからない。
···だから、商隊にくっついて行くことはしなかった。あんまり見知らぬ他人と一緒は好きじゃない。信用できないからだ。暗殺者同士ならいざ知らず、赤の他人と長く一緒は私自身も嫌だ。
一人きりのほうが楽だ。おそらく、私は冒険者としてパーティーを組むことはないだろう。もちろん、結婚なんてしないだろうね。信用できる相手なんているわけないから。
···そういえば、街道のところどころに宿場町があるらしいけど、そこまでにたどり着けなかったらどうしよう?考えたことなかったね。どれくらい先に宿場町があるかもわからない。
···困ったな。まぁ、たどり着くまで歩けばいいか。
そう考えてたら、宿場町が見えてきた。ここで情報を仕入れよう。
宿に入ってまずは部屋の確保だ。
「いらっしゃい。1泊6000ジールだけどいいかな?」
(コクン)、(ピッ!)
「まいど!カギはこれだ。明日のチェックアウトは午前10時だからな」
「···?チェックアウト?」
「もしかして初めての宿泊かい?この時間までの宿泊代金って事だ。連泊以外でこの時間を過ぎると別料金が発生しちまうんだよ。変更があったら早めに言ってくれ。逆に部屋に入れる時間はチェックインだ。だいたい午後3時が多いぞ。これでいいか?」
「(コクン)···ありがと」
なるほど、そういう事か。今日もひとついい勉強になった。
他に客がいなかったので、ついでに聞いてみよう。
「···この先の宿場町ってあるの?」
「おお、あるぞ。だいたい普通に歩いてたどり着けるぐらいの距離に設けられてるからな。ただ、道中に魔獣にあったりして予定が狂ったりしたら野宿になってしまうなぁ〜」
「···野宿するには何が必要?」
「あんまりおすすめしないぞ?寝ているところを魔獣に襲われたら終わりだからな。まぁ、テントと寝袋は最低限必要だな。魔法が使えるなら火を点けて水魔法で消せればもっと便利だがな。出て右にある雑貨屋に売ってるぞ」
「···いい勉強になった。···ありがと」
まだ店が閉まるまで時間はありそうだ。今のうちに買っておこう。何があるかわからないからね。
雑貨屋で一通りの日用品を買った。保存食も念のため多めに買っておいた。そういえば服も里を出た時のもの1着しかない。予備も買っておくか。
適当に買い物をしていたら夕食の時間になった。さっさと食べて早めに寝よう。早めに出発すれば時間的な余裕ができるからね。
次の日。
宿場町を出たら街道は森に入っていった。これまでの平原にあった道ではないから見通しがききにくい。魔獣に襲われやすい箇所だから早めに抜けよう。何がいるかわからないからね。
足早に駆け抜けようとしていると、ちょっと先で空から何かが落ちてきた。
空から落ちてきた何かはすぐに森の茂みの奥の方へバキバキと枝を折りながら落ちていった。
···魔獣?私は警戒しながらその落ちてきた何かを確認に向かった。魔獣なら倒してしまえばいい。部位を持っていけばお金になるからだ。
落ちた場所に行くと、そこにはドラゴンがいた。翼が青いから青竜?初めて見たよ。
どうやら気を失っているようだ。なぜ落ちてきたかはわからないね。ケガはかすり傷程度だから、空飛ぶ魔獣に襲われたとかではないようだ。
10分程度で青竜は目覚めた。
「う···、う〜ん。···あれ?···ここはどこかしら?」
「···気がついた?」
「···あら?あなたは誰かしら?」
「···ハル。旅の冒険者」
「そう···。あたしはナナ。見ての通り青竜よ」
「···空から落っこちてきたけど?」
「···あ〜。そういう事ね。完全に理解したわ。恥ずかしい話、実はお腹が空いて気を失ったのよね〜」
「···そう。じゃ、食べる?」
「いいの!?じゃあ、ありがたくいただくわね!」
ナナと名乗った青竜はお腹が空いて墜落したらしい。そんなドジなドラゴンがいるとは思わなかったね。地上最強人種なのにね。
私が買っていた保存食をほぼ全部食べられちゃった。あとで食べた分を払ってもらわないといけないね。
「···じゃ、食べた私の保存食のお金をもらえる?」
「金とるの!?」
「···?だって、それ私の分の保存食だから」
「···あぁ〜。ごめんなさい。お金ないのよ···」
「···食い逃げってやつ?」
「犯罪者扱いしないでよ!?あとでちゃんと払うわ!あなた冒険者なんでしょ?だったら私をパートナーにして!働いて返すわ!」
「···パートナーなんていらない。···私一人だけで十分」
「そんな事言わないでよぉ〜!あたしはあなたの役に立つわよ!しっかりサポートしてさらに稼げるようになるから!」
「···例えば?」
「あたしはバフ系魔法が得意なのよ。だから素早さや力とかを補助できるわ!どう!?」
「···わかった。保存食代払ったらそれまで」
「わかったわ。それでいきましょう。···そういえばあたしって冒険者登録してないのよね〜。手伝ってもらえないかしら?」
「···世話が焼けるね。それもお代に込みにするよ」
「いいわよ〜。損なんてさせないからね〜」
これがナナとの出会いだったんだ。おなか空かして落っこちてきてパートナーになるなんて、どういう巡り合わせなんだろう?
これも運命だったんだろうと、この時は思わなかったね。後になって人生でかけがえのないパートナーになってくれたんだよ。
しばらく歩いていると、茂みから気配がした。どうやら魔獣がいるみたいだ。
「···下がって。魔獣倒すから」
「じゃあ、せっかくだからあたしのバフをかけてあげるわ。···変わった武器よね?銃にもなるならコレなんかはどうかしら〜?」
「···何をしたの?」
「狙撃性能アップのバフよ。あたしオリジナルで命中率や威力アップも込み込みよ〜!試しに撃ってごらんなさい」
バフなんてかけられたことないからわからないけど、とりあえず狙って···、撃った!
ヒュンッ!バシッ!
···すごい。今までにないほど弾が速く、そして当たるどころか弾が貫通してしまった。これがバフというものなのか。これも今日はいい勉強になった。
「どうかしら?一人で戦うのもいいけど、こういったサポートがあるともっと便利じゃないかしら?」
「···ナナの言うとおりだった」
「そう言ってもらえると嬉しいわね!じゃあ、一緒についていっていいかしら?」
···いいんじゃないかな?ナナが戦うならコンビネーションとか考えないといけないし、気が合わないとムリだけど、こうやって補助してもらって私が戦うというのは悪くはないね。
「···いいよ。···ただし、取り分は山分けでそこから保存食代を引くから」
「き、厳しい〜〜!でも、これだけ強いならあたしも安心してサポートできるわ!よろしくね、ハル!」
こうして私はナナと一緒に旅することになったんだ。
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