神様の憂鬱-15 脱サラ···じゃなくて脱『神』達成!?

 かつて地上が荒れた時に作った浮遊大陸が墜ちる寸前までになってしまった···。


 アキくんたちの活躍でなんとかなったものの、さすがにこれ以上はマズいと判断して、次世代の整調者ピースメーカーの発表を行った。


 予想通りリナちゃんがコルくんを心配して激おこぷんぷん丸になってたな。両思いでよかったよ。


 結局流れでアキくんを巻き込んじゃったなぁ~。これも運命か。


 まぁ、アキくんとリオの家族まで込みなら13人、さらにカーネたちも加わるようだからさらに4人増えて17人もいれば大丈夫かな?



 新世代組はやっぱ結成から日が浅いから旧世代よりも連携力が劣るなぁ~。こればっかりは仕方ないか。


 それにしても子どもたちの連携がすごすぎる···。まさにニュ◯タイプだろ?もしくは先読みが過ぎるから◯システムか?



 そんな中、王都でスタンピード発生の情報が来た!···以前と同じ状況だけど、今回は変身したアキくんと子どもたちが『魔力無制限』という無双状況で魔法を連発していた。


 ···この火力、もう大魔王超えてなくね?新世代組必要なかったかも?


 そう思ってると、重大事件が起きた!!


 大魔王ムーオが王城に忍び込んでアキくんを『神殺しの短剣』で刺した!!



「エレくん!?大丈夫!?」


「···えっ!?アキくんじゃなくてオレ!?なんともないけど···?」


「えっ···?神の力の核を奪われたけど、なんともないの!?」


「いや?ちょっと力が弱まったかなぁ~?ってぐらいだけど?」


「あれ?エレくんの核はアキくんに移植したはずなのになんともない?どういうことかなぁ〜?」


「『ワールド・エクリプス』が成立してないから?」


「いや、奪われた時点で神の力が行使できなくなるんだよ。使えるんでしょ?」


「ああ。特に何も問題ないけど?」


「···まさか!?」



 ナビくんはなにか気づいたようで、管理PCのキーボードをとんでもないスピードで弾いていた。その結果、



「そうか···。そういうことだったんだ!!」


「どういうことだってばよ?」


「神狼族の特徴のおかげだよ!アキくんにお子さんが産まれた時に、神の力の核が一部受け継がれたんだ!」


「···って事は、フユくんとナツちゃんにも神の力の核があるってこと?」


「その通り!厳密にはアキくんが半分で、双子がそれぞれ4分の1を持ってるってこと!」


「···そうかぁ~。それでオレはまだ力を行使できるって事だな?」


「···エレくん?キミが神狼族を創ったのは、間違いじゃなかったよ。あの子たちのおかげで、エーレタニアはまだ無事なんだから!」


「そう···、だな。よし、これを伝えておくとするか!」


「待って!それはやめておいたほうがいいよ。『敵を騙すなら味方から』ってね!」


「そうだな···。そうするか!」


「それと、アキくんが死んじゃって『旅行保険』が発動したよ!」


「やっとだな!これで保険金収入を得れるようになったな!」


「エレくんの悲願だった神を辞めるのも、秒読み段階だよ!おそらくムーオたちを追い返したら完成だ!」


「ようやくこの時が来たか!ながかった···」


「お疲れ様!引っ越し準備しておいてね!」


「ああ!···ところで、余ったGPはどうなるの?」


「え?全部没収・・・・だけど?」


「···じゃあ、今すぐに全部換金する!!」


「えっ!?それはダメだよ!?人々に分配するんだから、ひとりじめはダメなんだぞ!?」


「ひとりじめじゃない!これはオレの『退職金』だ!!頑張ってここまで完成させたじゃない!?オレの仕事もねぎらってよーー!?」


「もう〜!ダメなものはダメ!分配して余った分は別の世界の創造に使われるんだから!使い切っちゃったら、新たな世界が誕生しないんだよ!?」


「そんなの知るか!オレなんか最初からほとんどGPない状況からここまで育てたんだぞ!?ちょっとぐらい果実もらったっていいじゃんか!」


「エレくん?地球には『ノブレス・オブリージュ』って言葉があるんでしょ?」


「それは裕福で余裕ある連中・・・・・・・・・がやるものであって、オレは貧乏で余裕なかった・・・・・・・・・んだぞ!?」


「も〜!しょうがないなぁ~!こういう時は子どもなんだからぁ~!1000GPあればいいでしょ!?」


「···1千万ジールか。まぁ、働き具合からして少なすぎるが、これ以上ゴネても出そうにないし···。それで手を打つよ」


「あんまりこれでゴネた神なんていなかったんだけどなぁ~」


「ああ、ついでにGPでオレの家建てるわ。現金じゃないからいいでしょ?」


「···ワンルームなら」


「よし!この空間のインテリアそのまま移設だから快適な引きこもり生活をエンジョイできるぞ〜!頑張ったかいがあった~!」



 不機嫌なナビくんを横に、オレは神を辞める最終段階の準備を済ませるのだった。



 そして、ムーオとの決着がつき、ファイアーウォール設定のめどがたった。世界の完成率は100%となり、正式に神を辞めることができるようになった。


 アキくんたちのもとヘ向かい、フユくんとナツちゃんが持っていた神の力の核を回収し、ファイアーウォールを龍脈にインストールし、最後の神託を下して、オレの仕事は終わった···。



 そして伝説···、ではなくてオレの引きこもり生活が始まった!!


 家はアクロの町中の1軒家だ。ただ、ナビくんがGPをケチりやがったせいで、アキくんの家のように温泉が引き込まれておらず、浴槽がなくてシャワーブースのみという、簡素な家だった!


 おのれぇ〜!あれだけ苦労した神に対してこの仕打ち!万死に値するわ!


 まぁ、外湯が近かったから、雨の日以外は通ってるけどな。


 先日、買い物中のアキくんたちにばったり出くわした!向こうはオレが町民になってるって知ってビックリしてたな!オレだって元日本人なんだから風呂は入りたいさ!アキくんほど温泉好きではないにしてもな。




 快適な引きこもり生活を1年以上していると、ある時にふと自分の口座の残高が気になって覗いてみた···。



 残高:254,257ジール



 ···え?···あれ?···おかしいなぁ~?


 アキくんの旅行保険の保険料、舞台の印税は継続的に入ってるけど···、出費が上回ってるぅ~!?何に使ったっけ!?覚えてないわ!


 これはアカン!このままだと1ヶ月もたんわ!!


 ···仕方ないな。ラーメン屋台やるかぁ~。って!食材がGPで出せないから現金で調達しないと!?


 ···アカン!詰んだわ···。仕入れ代金が不足してるわ。やむを得ない···。この手段は使いたくなかったが!!



 このあと、オレはアキくんの家に行って土下座してラーメン屋台の運転資金を借りるのでした···。


 その時のアキくんの顔は、とてもとても不気味な笑顔・・・・・・でした···。まるで某スパイの家族でエスパーの目を細めたような笑みを···。



 ナ、ナニヲサレルノデショウカ?



 オレの憂鬱は、神じゃなくても続くようだった···。

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