神様の憂鬱-09 異色な侵略

 先日神狼族をこの手で滅亡させたオレは、時の流れを限りなく遅くして寝込んでしまった。


 いくら神になったからとはいえ、あの光景をすべて見届けるのは相当に精神的負担がキツかったようだ。あとでぶっ倒れてしまったよ。


 ···こんなはずじゃなかった。でも、やってみないとわからない。最初は大成功だったけども、あとで大問題になったってのは現代日本でもよくある話だ。


 それでもなぁ~···。我が子同然で育てた種族を、自らが手にかけてしまうなんて···。注文オーダーめっちゃキツイっすよ~···。



 結構長いこと落ち込んでしまっていたが、時間なんてあってないようなところだからよくわからんが、とりあえず立ち直ったよ。さぁ、この世界を完成に導いていこう。



 世界はいい感じに発展を続けていた。完成率が90%を超えたところで、ナビくんからこんな話が出てきたんだ。



「エレく~ん!完成率90%を超えたから、エレくんがエーレタニアに顕現できるようになったよ~!」


「えっ?顕現って···。エーレタニアを歩けるって事?」


「そうだよ~!気晴らしや巡回がてら、遊んでくるのもありだよ~!ず~っとここに引きこもってたって楽しくないぞ~!せっかく創ったんだから楽しんでみなよ~!」


「そうか···。そうだな!せっかくここまで創ったんだから楽しまないとな!え~っと、オレはどういう状態で地上に降りるんだ?」


「普通~のごく一般市民から整調者ピースメーカークラスの実力までありだよ~!もちろん、強くするにはGP使うけどね!」


「そうだよなぁ~。あんまりGPは使いたくないから、ほどほどの強さで降りようかな?あとお金は?」


「GPと交換で用意できるよ~!レートは1GP=10000ジールってとこかな?1ジールは1円換算で」


「GPの価値安ッ!?えっ!?1GPであんだけとんでもない事起こせるのにそんな価値しかないのかよ!?」


「交換対象が違うからそんなもんだよ?」


「あぁ~。航空会社のマイル交換と同じかぁ~。国際線ファーストクラスの特典航空券とかだと1マイルあたりの価値が爆増するのと一緒だわぁ~。まず取れんけど」


「で?どうする?稼ぐ手段ないとGPを大量消費しちゃうけど?」


「今はパス。慌てて降りないといけないわけじゃないし、稼ぐ手段考えてからにするわ」


「そうかい?それならついでにジョブも決めとけばいいんじゃない?」


「ジョブ···?え?ゲームみたいに職業あんの?」


「あるよ~!神様専用だけどね!これだけあるから選ぶの大変だよ~!」


「どれどれ···。うわぁ~、『勇者』から『遊び人』まであるわ···。なんだ?『マフィア』って···?なんでこんなのまであるんだ?」


「マフィアは盗賊の上位職だね~!その国での悪の組織を牛耳れるよ~!」


「神様専用だからってとんでもないなぁ~。まぁ、考えとくわ」


「そうそう!地上に降りる時は一応3つ装備を渡しておくよ~!これは無料ね!『蓄魔の腕輪』・『無限収納カバン』・『魔力剣』だよ~!」



 お~!ゲームっぽい装備だな!まさに『神器』ってヤツだな!説明は受けたけど、蓄魔の腕輪には自爆機能があったな。ナビくんのロマンが爆発してるなぁ~。


 キーワードは『バ〇ス』にしとくか!まぁ、言わんだろうけどな。


 ちなみに職業は吟遊詩人にしておいた。旅して世界を見て回るならこれかな?



 そんな事を考えていたら、管理用モニターに久々の侵略警報が鳴り響いた!


 またかぁ~···。最近めっきりなくなって安心していたのになぁ~。今度はどんなヤツだ?



「えっ···?あれ···?見失っちゃった?」


「ナビくん?見失ったって?」


「侵入者だよ。見失っちゃった。こんな事は初めてだよ~!」


「どういうこと?」


「侵入者はこの世界とは違う力を持ってるから、それに反応するようになってるんだけど···。力が···、ない?」


「空っぽの状態で来たって事か···。まぁ、動き出すのに時間がかかりそうだな。様子見しかできんか···。今のうちに整調者ピースメーカー選定しとくか?」


「あれの維持だけでもGPかなり使っちゃうからね~。ちょっと待った方がいいんじゃない?エレくんの計画のためにも」


「それもそうか。引き続き監視を強化しておくか」



 そう、こいつらは非常に巧妙にエーレタニアに侵入し、計画を着々と進めていたんだ。そしてさらに時間が経過し···



「エレくん!大量の黒魔力が発生したよ!場所は···、魔法研究所だね。あ~···、どうも事故っぽいね」


「人為的じゃないならどうしようもないよなぁ~。何か大物が現れそう?」


「え~っと···?あっ···?これは···?また見失っちゃった···」


「···は?···また?···う~ん、今回の連中はこれまでと違って知能戦だな。これまでの連中のほうがやりやすかったんだけどなぁ~」


「わかりやすかったからね。何が目的なんだろうね?」


「侵略なら『エーレタニアを乗っ取る』だろ?今回は武力制圧じゃなさそうだし···。まさか、オレの力を奪って『ワールド・エクリプス』を起こそうって腹積もりか?」


「いや、それ以外にも実は手があってね。この世界の龍脈に神が同化したらそれでも完了しちゃうんだけど、100年以上時を加速できずにやらないといけないから、事実上やった神はいないんだよね。その世界の神から奪った方が早いし」


「じゃあ、こいつらはその方法狙いか?ずいぶんと長期計画だなぁ~」


「動向も探れないんじゃ、こっちから手が出しようがないね。まぁ、いつでも整調者ピースメーカー募集の準備はしておくよ。今回は推薦枠も作っちゃおうよ!」


「推薦?誰から?」


「すでに亡くなっちゃった人から!」


「死後の世界まで手が出せるのかよ···」



 まぁ、あの世からの推薦なら信用できるか。ウソつけないからな。

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