リオ過去編-03 運命を見るってなんだー?

「どうかしたのか?困ってるようだが?」

 

 オレが身分証を作るのに必要な後見人がいないせいで、街に入れないで門のところで困ってると、貴族の馬車が横に停まって声をかけられたんだなー。

 

 

「集落を出て身分証がなくて街に入れないんだぞー」

 

「後見人がいないのか?失礼だが、家族はいないのか?」

 

「いや、いるぞー。ただ、半ば家出したようなもんだから、今さら帰るって事はできないんだぞー」

 

「差し支えないなら、家出の理由は教えてもらえるかな?」

 

「オレは力がなくて、狩りに連れてってもらえなかったんだけど、魔法はかなり使えるようになったんだなー。

 それでも狩りに連れてけないって言われて、旅に出ることにしたんだぞー」

 

「なるほど。では、私が後見人となろう。その代わりと言ってはなんだが、私の領地まで護衛をお願いできるかな?」



 えっ?いきなりそんなに信用していいのかー?まだ会ったばかりだぞー?そう思ったら側近の人が慌てだしたぞー。


 

「パイル様!?何をお考えで!?」

 

「いや、護衛は多いほうが安心だ。領地まではまだまだ距離もあるしな。ドラゴン族だし、それなりの戦力は期待できるだろう」

 

「しかし!得体の知れない者をそばに置くわけにもいきませんぞ!?」

 

「その点は問題ない」

 

「どうしてでございますか···?」

 

「···目だ」

 

「目···、ですか?」

 

「そうだ。この者の目は透き通っている。純粋で将来に対する希望に満ち溢れている。チャンスを与えれば、とんでもなく化けそうな予感がするのだ。

 ···私のはよく当たるものだよ」

 

「しかし···」

 

 

 えらい買われてるなー?目を見ただけでそんな事がわかるものなのかー?逆にオレが信じられないぞー。そう思っていたらもう一人出てきたぞー。

 

 

「隊長。この人の言う通りにしてあげて。ここまで言うということは、何かを感じたのでしょうから」

 

「ヒルダ様···。わかりました」

 

「さて、こちらとしてはいい条件だと思うのだが、いかがかな?」

 

「···ありがたい話だけど、本当にいいのかー?」

 

「ああ。そうだ!うちの領地に着いたら護衛料も渡そう。破格な条件だぞ?」

 

「···わかったぞー。よろしくお願いするぞー」

 

「よし。では門番よ。このドラゴン族はこの私が、伯爵パイル・カイジが後見人として役所に届け出よう。これでいかがかな?」

 

「か、かしこまりました!では、お通り下さい!」

 

 

 こうしてオレは馬車に乗せられて街に入ったんだぞー。そして、馬車の中で自己紹介したんだなー。

 

 

「そう言えば自己紹介してなかったなー。オレは白銀竜のリオ。集落をまとめるハンティング家の4男だぞー」

 

「私はパイル。レオナード王国のカイジと言う学園都市を領地とする伯爵だ。そして、妻のヒルダだ」

 

「ヒルダよ。よろしくね」

 

「おう!おなか大きいなー。赤ちゃんがいるのかー?」

 

「ええ。もうすぐ生まれそうなのよ」

 

「そんな状態でよく旅してるなー」

 

「今回ばかりはどうしても行かなくてはならなかったのよ。···両親の弔いだったのでね」

 

「あー、聞いて悪かったぞー···」

 

「気にしないで···。魔獣に襲われるなんて、日常茶飯事だしね」

 

「よし、わかったぞー。領地までしっかりと護衛するからなー!安心しておけよー!」

 

「ははは!頼もしいな!では、領地までよろしく頼む」

 

「おう!」

 

 

 実はこの時のヒルダさんのおなかにいたのがカーネだったんだなー。まさか一緒に整調者ピースメーカーとして戦うことになるなんて、この時は思ってなかったんだなー。


 

 馬車は宿の前に着いて護衛たちが宿泊手続きをしている間に、オレとパイルさんは役所に行って、オレの身分証の作成を手伝ってくれたぞー。

 

 これで、どこの国でも入ることが基本的にできるようになったぞー!

 

 

「パイルさん、ありがとなー!」

 

「ははは!まぁ、こんな事はほとんどしないのだがな」

 

「なんでオレにそこまでするんだー?」

 

「···ここだけの話だが、秘密にできるか?」

 

「秘密?そんな重大な事なのかー?」

 

「ああ。これは本当に信用できる者しか知らないがね」

 

「秘密にするけど、会ったばかりでそんなに信用していいのかー?」

 

「それにも理由があるだよ。

 ···私には、『その人の運命』が見えるのだよ」

 

「『運命』···?」

 

「そう。運命が強いほど、よく見えるのだ。リオは今まで見た中ではとびきり強かった。この先の未来で英雄に匹敵する活躍をしそうな運命が、リオの目を見た時に感じたのだよ」


「オレが英雄になるだってー?」


「まぁ、可能性の話だ。運命はその時々で変わるが、強いほどブレにくい傾向があってな。その点、リオはほぼブレはないと見ている」


「そうなのかー?よくわからんぞー」


「今はそれでいい。時が来たら、自然とそうなるものさ」

 

「だから門であんな事を言ったんだなー?」

 

「ははは!ああ言わないと、隊長は折れないからね。真面目なのは素晴らしいことなのだが、若干過保護気味でな。私のワガママを聞こうともせんのだよ」

 

「苦労してんだなー」

 

「そうでもないさ。···もしかすると、そう遠くない未来に大戦が起こるやもしれんのでな。その時には大いに活躍しそうではあるので、手元に置いてるのだしな」

 

「それも運命なのかー?」

 

「リオほどはっきりではないがな。こんな力を持っている以上、身を守るためなら打てる手は打っておかないとな」

 

「そのうちの手の一つがオレなんだなー?」

 

「出会うまではわからなかったがね。ただ、こうして出会ったのも、運命なのだろうな」

 

 

 そんな出来すぎた話ってあるものなのかなー?まー、オレとしては身分証作ってもらえて、護衛代もらえるならそれだけでもありがたいけどなー。

 

 とりあえず、当面はなんとかなりそうだなー!

 

 

 翌日···

 

 

「おい!!こらーー!!いい加減に起きんかぁーーー!!」

 

「ん~~···。ムニャムニャ···」

 

「う〜む。運命を見誤ったか···?」

 

「そういう事もあるのではないかしら?」

 

 

 オレが起きる前にみんな出発の準備が出来てしまってたようで、オレが最後だったぞー···。


 みんな早起きなんだなー。

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