第9話 対決 四天王メルティ
第9話 対決 四天王メルティ
「次はあなたの番ですよ」
メルティを杖で指しながら、不敵にほほ笑むマリスさん。
「お前お前お前お前お前―!!」
逆上したメルティは両腕を掲げると巨大な火の玉を作り出す。
「これでもくらえー!」
そして、それを振り下ろして投げ付けてきた。
「アイスウォール」
瞬時に氷の壁を作って防御するマリスさん。
メルティの火の玉は掻き消えてしまう。
「馬鹿め!
そいつは囮だ!」
マリスさんの周囲の地面から三体のクレイゴーレムが現れる。
「行けー!」
マリスさんに殴りかかるゴーレム達。
しかし、
「来ると思ってた」
ルナテラスさんが鞭を持って立ちはだかった。
「バインドウィップ!」
森の木々に絡めた鞭で三体の腕を一挙にまとめ上げる。
鞭を使った戦法だった。
そして、
「おらあっ!」
ガレスさんの巨大な斧が一挙にゴーレム達を粉砕する。
「勇者がいなければ好き勝手できると思っていたなら大間違いですよ」
マリスさんは涼やかにほほ笑んでいる。
「この! この! この!」
火の玉を連発してくるメルティ。
「エクスプロージョン」
しかし、マリスさんのそれを上回る爆炎でメルティの炎はかき消される。
「クッ! 覚えてろ」
後ろを見せ、逃げようとするメルティ。
「リンクス君。
彼を逃がしてはなりません。
精神系の魔法攻撃はできますか?」
「はい!」
もちろん、ボクの魔法のレパートリーには精神系のものもある。
そして、しりとりにできる事も確認済みだ。
左手を開いて、突き出す。
「ナイトメ……!」
そして、次に右手を広げ、突き出す!
「アイスエッジ!」
左手から悪夢。
右手から氷の刃。
僕のしりとり魔法はメルティに命中した。
「うわあああっ! ティフォン様ぁっ!」
おそらくメルティは悪夢を見ている。
「わたしはまだやれます~っ!
だからだからだからだからだから!
降格させないでぇ~~~!」
「よほど魔王ティフォンが怖いようですね」
メルティにとっての悪夢は上司である魔王ティフォンだった。
「ぐわあっ!
こ、氷の刃! いつの間にぃ!」
悪夢に捕らわれている内に氷の刃も命中する。
動きを止め、落下していくメルティ。
「あなたを逃がしたら、必ず港町マイリスに害が及ぶでしょう。
ここで仕留めます」
マリスさんが精神を集中する。
「ウィンドカッター」
風の刃がメルティを切り裂き、とどめを刺す。
こうして四天王の一人は撃破された。
「しかしあなたのスキルは優秀ですね」
マリスさんは感心しているようだった。
「MP消費0ってだけでありがたいです」
「それもそうですが、二種類の魔法を瞬時に繰り出すのは困難な事ですよ」
瞬時に使えるのは呪文をしりとりにするための便宜上の事だ。
でも、言われてみるとこの速さで二種類の魔法を使うのは見た事がない。
「それにMPを消費しないって事は長期戦にも耐えられるってこったな」
と、ガレスさん。
「最速連撃と継戦能力、あなたのユニークスキルは使い方次第ではとても強力です。
成長を楽しみにしていますよ」
「やったね、リンクス君」
ルナテラスさんにも褒めてもらえた。
4年間、パーティに大した貢献ができなかった身としては、期待に応えられたのがとても嬉しい。
そして、冒険者ギルドに戻った僕達。
四天王の事が秘密だったので、その撃破も話題にはなってない。
しかし、受付のイネスさんは事情を知っているので、とても喜んでくれた。
今回の報酬は僕にとっては、かつてもらった事のない莫大な金額だった。
取り敢えず家を引き払わずには済みそうだ。
「おっと! リンクス殿。
ステータスウィンドウをご覧下さい」
報酬を確認して帰ろうとしていたら、イネスさんが驚いている。
冒険者ギルドの名簿は特殊な魔法によって一部のステータスウィンドウと連動している。
イネスさんが僕のステータスの変化に気付いたようだ。
僕は瞬きをしてステータスウィンドウを閲覧した。
ステータスウィンドウの一番上の変化はすぐに僕の目に入った。
「Eランク
派手さはないが、着実に力をつけている。
評判も後からついてくるだろう」
見慣れたFランクの文言が変わっている。
僕は四年目にしてついに、Fランクを脱し、Eランクに昇格したのだった。
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