第8話 出現ゴーレム軍団
森に入るとほどなくして木々の枝の折れる音が聞こえてきた。
土人形、クレイゴーレムだ。
「噂をすれば何とやら、です」
とマリスさんは言うが、クレイゴーレムは自然発生するのだから、四天王の仕業か分からない。
「さあ、リンクス君。
アイアンゴーレムを倒した魔法です」
「はい」
まずは左手を開き、前に突き出す。
「ライトニン……!」
そして、右手を突き出す!
「グラビティー!」
しりとり魔法がクレイゴーレムに炸裂。
落雷と重力波でクレイゴーレムは粉々になる。
魔力特化型のステータスの僕の魔法は威力も抜群なのだ。
と、思っていたら。
「見つけたー!」
不意に上空から声が聞こえてきた。
「見つけた見つけた見つけた見つけた見つけたー!」
木の上かと思ったが、そうではなかった。
相手は宙に浮いていた。
シルクハットに燕尾服、首には人型のぬいぐるみを下げている。
大きく開いた口には牙が生えている。
それは明らかに人間ではなかった。
「お前だな。その攻撃はあ!」
指差てくるが、その指は長くとがっている。
「ボクちゃんのアイアンゴーレムを壊したのはお前で間違いなーい!」
確かにそうなんだけど。
「やはり現れましたね」
満足そうに言うマリスさん。
これがゴーレムマスター、メルティみたいだ。
こうなる事を分かっていたのか?
「メルティはプライドが高い。
必ず釣られると思っていました」
僕は囮としてクレイゴーレムを倒したようだ。
それは別にいいんだけど。
「ん?
他の連中も見た事あるぞ。
お前ら、勇者の仲間だな?」
メルティはガレスさんとマリスさんのとこも知ってるみたいだ。
「でも!でもでもでもでもでも~!
これはちょうどいい。
お前らは勇者のいない内にまとめて殺してやるー!」
そう言うとメルティは指をパチンと鳴らした。
すると地面から十数体のゴーレムが現れた。
クレイゴーレムもアイアンゴーレムもいた。
他にも、石でできたストーンゴーレム。
氷でできたアイスゴーレムなどなど。
それは様々な色と材質のゴーレム達だった。
「これってヤバいんじゃないですか?!」
敵はすでに布陣を終えていた。
僕は焦ってしまうが、ルナテラスさんもガレスさんも落ち着いている。
そして、マリスさんは静かに言った。
「わたしの『神算鬼謀』が問題ないと告げています」
それは巨人の集団の囲まれていながら、確信と自信に満ちていた。
さわやかで柔らかな笑顔だった。
「クレイゴーレムとウッドゴーレムは、ガレスとルナテラスに任せてよろしいですか?」
「ああ」
「分かったわ」
「リンクス君。
アイアンゴーレムには重力、アイスゴーレムには炎です。
炎の魔法も使えますか?」
「いけます」
僕は自信を持って答えた。
昨日の内にいろんなしりとり魔法のパターンを考えておいた。
そして僕は習得している魔法が多いのだ。
まずルナテラスさんが敵に飛びかかっていき、クレイゴーレムとウッドゴーレム達の注意を引く。
身軽でしなやかな動きでパンチや踏みつぶしを華麗に回避。
彼女に気を取られたゴーレム達にガレスさんが斧を振う。
ひと振りで轟音が巻き起こり、ゴーレム達が三体は吹っ飛ばされる。
巨体に見合ったどころか、驚異的な威力だ。
三回も攻撃すればクレイゴーレムとウッドゴーレムの群れは全滅していた。
その前衛の後ろからはアイアンゴーレムが。
「ライトニングラビティー!」
ここは僕の出番。
前回同様、落雷と重力波でアイアンゴーレムを攻撃。
MP消費0の「しりとり魔法」の特性を生かし、倒せるまで何度でも攻撃。
数回の攻撃でアイアンゴーレムは潰れた。
そうしている間に空気がひんやりしてくる。
氷の巨人、アイスゴーレムだ。
冷気の吐息を発して近づいてくる。
僕は両手の拳を握りしめた。
炎を使ったしりとり魔法ならこれだ。
まずは左手を開いて、突き出す。
「パイ……!」
そして、次にに右手を広げ、突き出す!
「ロックブラスト!」
左手から火の玉。
右手からは石つぶて。
しりとり魔法、パイロックブラストだ。
熱と打撃でアイスゴーレムは粉々になる。
しかし、さらに新手のゴーレムが。
石でできたストーンゴーレムだ。
「石だった場合は……、えーと」
僕が考え込んでいると、
「わたしが行きましょう」
マリスさんが前に出た。
魔法の杖を構えている。
彼が精神を集中すると空気が変わった。
周囲の魔素がマリスさんに一気に集まっていく。
「ウィンドカッター」
マリスさんが言ったと思うとストーンゴーレムは上半身と下半身で真っ二つに。
石の巨人が崩れ落ちる轟音が響く。
真空の刃物を発生させるウィンドカッター。
ストーンゴーレムはまさに瞬殺された。
すごい威力だ。
「こしゃくなこしゃくなこしゃくなこしゃくな~ッ!」
上空からメルティの甲高い声が降り注ぐ。
「よくもボクちゃんのかわいいゴーレム達を~!」
見ればゴーレム達は全滅している。
「次はあなたの番ですよ」
マリスさんはメルティを杖で指しながら、不敵にほほ笑んだ。
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