第17章 星空の下で
夏の終わりが近づき、夜空に星々がひときわ輝く季節となった。ミアは、この美しい夜空を村人たちと一緒に楽しむ方法はないかと考えていた。
「そうだわ、星空観察会を開いてみましょう」
ミアの提案に、村人たちは興味津々だった。特に子どもたちは、夜更かしできる特別な機会に胸を躍らせた。
観察会の準備は、村全体で進められた。ミアは特製のハーブティーを用意し、リリーは夜に咲く花を植えた。村の大工さんは、みんなが寝転がって星を見られるような特製のデッキを作ってくれた。
いよいよ当日、村人たちは小高い丘に集まった。澄んだ夜空には、無数の星が瞬いている。
「わぁ、きれい!」
子どもたちの歓声が上がる。
ミアは、準備してきた望遠鏡を設置した。
「さあ、みんなで星座を探してみましょう」
モモおばあちゃんが、昔ながらの星座にまつわる言い伝えを語り始めた。
「あの明るい星は、『羊飼いの星』と呼ばれているのよ。昔、羊飼いの娘が道に迷った時、その星に導かれて家に帰ることができたという話があるの」
子どもたちは目を輝かせて聞き入っている。ミアは、その物語に魔法をかけた。すると、星々が線で結ばれ、空に羊飼いの娘の姿が浮かび上がった。
「すごい! 本当に見える!」
大人たちも感嘆の声を上げる。ミアの魔法で、星座の物語が生き生きと蘇ったのだ。
夜が更けるにつれ、みんなはデッキに寝転がり、ゆったりと星空を眺め始めた。ミアの淹れた特製ハーブティーを飲みながら、静かな時間が流れる。
「ねえミア」
リリーがそっと話しかけてきた。
「この星空を見ていると、私たちってすごく小さな存在なんだって感じるわ」
ミアは優しく微笑んだ。
「そうね。でも同時に、この大きな宇宙の一部でもあるのよ」
そんな会話を聞いていた子どもが質問した。
「ミアお姉ちゃん、星にも魔法はあるの?」
「ええ、きっとあるわ。私たちにはまだ分からない、大きな魔法がね」
夜が深まるにつれ、流れ星が見え始めた。
「みんな、願い事をするのよ」
モモおばあちゃんが声をかける。
村人たちは目を閉じ、それぞれの願いを心に描いた。ミアは、この村の幸せが続きますようにと願った。
観察会が終わる頃には、みんなの心に穏やかな満足感が広がっていた。星空の下で過ごした時間は、日常の喧騒を忘れさせ、大切なものを思い出させてくれたようだ。
帰り道、ミアは村人たちの顔を見た。みんな、どこか優しい表情をしている。
「ねえ、モフモフ」
ミアがつぶやいた。
「今夜、みんなの心に小さな魔法がかかったみたいね」
モフモフはゆっくりと頷いた。
「うん、星空の魔法だね」
その夜以来、月に一度の星空観察会が村の新しい伝統となった。季節ごとに変わる星座を眺め、ゆったりとした時間を過ごす。それは、忙しい日々の中で、自分自身や大切な人々のことを静かに見つめ直す、貴重な機会となっていった。
ミアは、これからもこの伝統を大切に守っていこうと心に誓った。星空の下で生まれる小さな魔法が、村人たちの心をより豊かにしていく。そんな確信が、ミアの心に灯っていた。
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