18.
「⋯⋯私、消しゴムを忘れちゃった時があったの。周りに貸してもらおうと思ったのだけど、仲のいい友達が近くにいなくて、どうしようって必死になって探していたら、久須君が自分の消しゴムをちぎって置いてくれていたみたいで、嬉しかった」
俯き加減でそんなことを言う。
詩織の言うことが本当ならば、彼女と隣同士になったことがあって、そして、祥也がそんな気遣いをしてくれたということになる。
自分が周りに気にかける余裕も、あったとしても、すごい迷惑だと思われかねないことだ。記憶違いだろう。
そんなわけないと否定的でいる祥也に、「あと、掃除の時もあって」とこう続けた。
「掃除の当番がたまたま一緒になった時があったのだけど、掃除って面倒くさがる人達が多いみたいで、他の人達もそうだったんだけど、私はそういうこともきちんとやりたいから一人でもちゃんと掃除しようとしていたら、久須君も黙々とやっていて、久須君もきちんとやりたいんだって勝手に親近感湧いちゃったり⋯⋯」
「ぼくも、おそうじすきです!」
「ジルヴァ君も綺麗好きなんだね。綺麗になると気持ちいいよね」
「はい!」
二人が掃除のことで盛り上がっている中、祥也は首を傾げた。
祥也は別に掃除するのは好きではない。
傍から見て掃除しているように見えたのは、サボって喋るほどの友人がいないために暇潰しでしていただけで、できることならばしたくないことだった。
本人ですら憶えていないどうでもいいことを憶えているのかと、内心驚いていた。
「ささいなことだけど、嬉しくて久須君ってこういう人なんだって思っていたのだけど、その二つよりも気にかけるきっかけがあったの」
祥也は目を合わせずであったが、詩織は顔を上げているようだった。
言葉の様子だと、どこか言ってもいいのかと迷っているようだった。
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