16.

「ごーかーと、またのりたいです!」

「ジルヴァ君、本当にゴーカート好きだねぇ」


先ほどゴーカートを乗った時のジルヴァのはしゃぎようを思い出しつつ、二人の会話に耳を傾けた時だった。


ぐうぅぅ⋯⋯。


ゴンドラという狭い空間の中で、これでもかと空腹音が鳴った。


「おなかがすきました⋯⋯」

「ジルヴァ君のお腹の音だったんだね。そうだよね、もうお昼時だもんね。じゃあ、観覧車を降りてからお昼にしようか」


そう言って、横に置かれていた荷物を掲げてみせた。



「いただきまぁすっ!」


ジルヴァの元気な声を筆頭にそれぞれそう言うと、テーブルの上に広げられた弁当に手をつけた。

先ほど詩織が掲げた荷物の中身は弁当だった。

詩織が持った時に初めて気づいたが、今までずっとその荷物を持ち歩いていたということなのか。

わざわざ作ってくるとは思わなかった驚きと、その手作り弁当を食べるのはいつぶりかと目の前にある弁当を眺めていた。


「おいしーです!」


祥也が手をつけずにいると、ジルヴァの歓声が上がり、「本当? 嬉しい」とその言葉通りに嬉しそうに笑う詩織が目に映った。


「まさしさまとおなじぐらい、おいしーです!」

「まさし、さま⋯⋯?」

「⋯⋯俺の、弟⋯⋯」

「弟君、二人いたんだね。だから、面倒見がいいんだね。⋯⋯あ、いや、ジルヴァ君は違うみたいだね」

「ぼくは、しょーやさまのおせわをしているんです!」


フォークで刺したタコさんウインナーを掲げて声高らかに言うジルヴァに、「⋯⋯お世話?」と首を傾げていた。

ジルヴァの耳としっぽがバレてしまったのだ。この際言った方がいいかもしれない。

拙いながらも祥也は、詩織にジルヴァのことを話した。

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