15.


「しょーやさま! みてください! ちいさい!」


窓の外をじっと見ていたジルヴァがわっとはしゃいでいるのを、「そうだな」とその目線の先を見た。

今、自分達が乗っているのは観覧車だ。さっきまで乗っていたアトラクションがまるでミニチュアのように小さくなっていた。

と、ジルヴァはその光景が面白く思えたようで、興奮のあまり、しっぽをぶんぶん振っていた。

それは服の下でも分かるぐらいなもので、サッと手で止めようとした。


「久須君、何してるの?」

「あ、いや⋯⋯これは⋯⋯」

「もしかして、しっぽもあるの?」


思わず、きょとんとした顔をする詩織と目が合った。

ということは⋯⋯。


「コーヒーカップに乗った時なんだけど、見ちゃったの。その、フードが捲れて犬の耳みたいのが⋯⋯」


祥也の反応を見るからに言ってはいけないと雰囲気で察したように、詩織が言いづらそうにしていた。


「びっくりしたんだけど、これは誰かに見られちゃいけないかもって、すぐにフードで隠したから大丈夫だと、思うんだけど⋯⋯」

「⋯⋯変、だと思わなかったのか」

「え、変? 変だなんて思わなかったよ。初めて会った時もフードを被っていたから気にはなっていたけど、被るのが好きな子なのかなって思ったぐらいだし、二次元でもケモ耳とかしっぽとか生やしているキャラとかいるし、それが現実にいるとは思わなかったけど」


二次元とかどうのこうのは祥也には全く分からないものだが、そのよく分からないもののおかげで、おかしいものだと思われずに済んだ。


「迷惑をかけたな」

「えっ、そんな、迷惑をかけたほどじゃないよっ! ⋯⋯だけど、安心した⋯⋯。久須君、結婚して子どもまでいるかと⋯⋯」

「何か言ったか?」

「ううん! ううん、なんでもない!」


手を振ってまで全力で否定するものだから、人に聞かれたくないものだったかと思い、詩織がジルヴァに話しかけたことでその話題を終わらせた。

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