13.

やはり自分はどうしようもなく情けない人間だと突きつけられた気がして、勝手に傷ついては嫌な気持ちが渦巻いていた。


雑踏に紛れ、二つの後ろ姿が見えなくなり、一人となった祥也はそのままぼうっと眺めていた。


入場口付近でもそうだったが、その時と同じように楽しそうに笑っている家族連れやカップルが散見する。

周りもああやって笑えるものなんだ。


膝にそれぞれ腕を乗せていた祥也は、それらを頬杖つく形にし、ため息を吐いていた。


そうした姿勢のまま、それぞれの乗り物に行き交う人達を眺め、しばらくした後、何となく手のひらで頬を触っていた。


「──しょーやさま、なにしてるのですか?」


横から突然、聞き慣れた子どもの声が聞こえ、ビクッと肩が上がった。

バッと驚きのままそちらを見やると、呆然とするジルヴァと詩織がいた。


「あたらしいあそびですか?」

「いや⋯⋯その⋯⋯まぁ⋯⋯」


言い訳をする言葉も見つからず、しどろもどろになっていると詩織が失笑した。


「ふふ、久須君って、そういうことをする人なんだ」

「⋯⋯おかしいことか?」

「ギャップがあって、面白いよ」


本当は大笑いしたいような、堪えきれないといった笑い方をし、ジルヴァは頬を押しつけ、まるでタコのような顔をして祥也の真似をしていた。

馬鹿にされているわけではない。むしろ、こんなことで呆気なく笑わせられることができるのかと、面食らっていた。


「⋯⋯って、いつまでも笑っていてごめんね。さすがに失礼だった、よね⋯⋯」

「いや、別に⋯⋯」

「ぼくはおもしろかったですよ!」


はいはい! と主張しては、またやり出しているジルヴァに「ジルヴァ君、タコさんみたいだね」と笑いかけていた。

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