11.
まず最初に向かったのは、メリーゴーランドだった。
園外でも聞こえた悲鳴の正体である乗り物ではないらしいことに内心安堵しつつ、少しずつ具合が良くなっていくのを感じながら、それに乗ろうとしたが。
「うまー! ぼく、うまがのりたいです!」
「じゃあ、危ないから私も一緒に乗ろうか。久須君は何に乗る?」
二人がさっさと決めては乗る姿をぼんやりと見ていた祥也は、詩織にそう言われて周囲を見やった。
この乗り物は自分で決めなくてはいけないものなのか。
しかし、何に乗れば。
「久須君、決まらない?」
「まあ⋯⋯」
「うまっ! ぼくとおなじうまにのりましょう!」
「馬、か⋯⋯」
手を上げてそう提案してくるジルヴァから、ちょうど二人の後ろに空いていた馬を見た。
ジルヴァがそう言うなら、馬に乗るか。
祥也はその馬に乗った。
それから少しした後、開始の合図のベルが鳴り響き、軽快なメロディが流れ始める。
「⋯⋯久須君、大丈夫?」
「だいじょーぶですか?」
背後でつい先ほど聞いていたメルヘンチックなメロディが流れる中、ベンチで項垂れている祥也のことを心配していた。
そうなったのは、乗っていた時のこと。
最初のうちは、ゆっくりと回り始めたものだから、このぐらいのテンポであれば大丈夫だろうと思っていたが、そのうちやや速くなっているように思え、それに加え、馬だけが上下に動き出した時は、あ、これはダメだと確信に変わっていった。
前にいる二人は楽しそうな声を上げていたが、必死に掴むことが精一杯な祥也はただ早く終わることだけを願っていた。
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